誹謗中傷は罪になる:問われる罪とは?

誹謗中傷は罪になる:問われる罪とは?

 誹謗中傷を受けて、心に傷を負った――。匿名で書き込めるインターネットの発展のよって、誹謗中傷の被害に苦しんでいる方は少なくありません。
 実は、誹謗中傷は罪になる可能性があります。本記事では誹謗中傷で問われる罪について説明させていただきます。

 

誹謗中傷とは

 誹謗中傷は、「誹謗」と「中傷」の2つのワードが組み合わされた言葉です。
 「誹謗」とは、他人を悪く言う行為のことを指し、「中傷」とは、根拠のないことを述べて、他人の名誉を傷つける行為のことをいいます。

 つまり、誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言って他人の名誉を傷つける行為のことを指します。

【詳細記事】誹謗中傷の定義とは?「批判」「非難」との違いも解説

 

誹謗中傷はどこから罪に問われる

 では、誹謗中傷はどこから罪に問われるのでしょうか。

 日本は民主主義の国です。意見と批判で成り立っています。表現の自由(好きな時に、好きな場所で、好きな方法で、好きなことが言える権利)との関係上、批判的な意見等も十分に尊重しなければなりません。

 ですので、誹謗中傷を罪に問うかどうかは、文言や文脈、会話のやりとり等を総合的に考慮して判断する必要があります。

 その最たる判断材料は、表現の自由で保護する必要性が低いかどうかです。例えば、嘘を掲示板等に投稿して、他人の社会的評価を下げるような行為や、「生きている価値がない」「死ね」等、人格を否定するような発言は、表現の自由で保護する必要性が低い行為と言えるでしょう。

 

誹謗中傷で問われる罪

 誹謗中傷で問われる罪は、以下の5つが挙げられます。

・名誉棄損罪
・侮辱罪
・脅迫罪
・業務妨害罪
・信用毀損罪

 以上の5つのうち、いずれかの罪が成立すると、懲役や罰金等、刑罰を与えられます。では、ぞれぞれの罪がどのような場合に成立するのか見ていきましょう。

名誉毀損罪

 名誉棄損罪とは、他人の社会的評価を下げる行為に対して成立する罪のことをいいます。
 名誉棄損罪が成立すると、3年以下の懲役・禁固、または50万円以下の罰金が科せられます。

 インターネット上の掲示板やライン、ツイッター等のSNSといった、不特定多数の人が閲覧可能な場で以下のような書き込むをすると、名誉棄損罪に問われる可能性があります。

・〇〇さんは会社内で部下に対して暴力を振るっている
・〇〇さんは△△さんの嫁と不倫関係にある
・〇〇さんは借金まみれになり自己破産をした過去がある

 上記のような内容を、インターネット上だけでなくビラでばら撒いても名誉棄損罪は成立する可能性があります。

【詳細記事】法律上の名誉毀損とは?わかりやすく解説

侮辱罪

 侮辱罪とは、他人を軽んじてはずかしめたり、見下して名誉を傷つけたりする行為に対して、成立する罪のことをいいます。
 侮辱罪が成立すると、拘留または罰金が科せられます。

 侮辱罪は、例えば、「バカ野郎」「デブ」等と罵ったり、「○○社長は性格が悪い人間だ」等と根も葉もない噂をしたりすると成立する可能性する可能性があります。
 また、職場のモラハラ(モラルハラスメント)も侮辱罪に該当する可能性があります。

【詳細記事】侮辱罪をわかりやすく解説:侮辱罪に当たる事例も紹介

脅迫罪

 脅迫罪とは、相手の生命や身体、自由、名誉、財産等に害を加えた行為に対して成立する罪のことをいいます。
 脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
 脅迫罪は、例えば、家に「お前の家を放火してやる」といった脅す内容の手紙やメールを送りつけると成立する可能性があります。

【詳細記事】脅迫罪とは?簡単に分かるように解説

業務妨害罪

 業務妨害罪とは、嘘の情報を流したり人を騙したりして、他人の業務を妨害する行為に対して成立する罪のことをいいます。
 業務妨害罪が成立すると、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金に科せられます。
 業務妨害罪は、例えば、「○○会社はパワハラがすごい」「××店はゴキブリやネズミが大量に発生して不衛生」といったような虚偽情報を発信すると、成立する可能性があります。

【詳細記事】業務妨害罪とは:条文と構成要件から紐解いて解説

信用毀損罪

 信用毀損罪とは、嘘の情報を流したり人を騙したりして、他社の信用を侵害する行為の対して科せられる罪のことをいいます。
 信用毀損罪が成立すると、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。
 信用毀損罪は、例えば、「あの会社は、経営が火の車になっていて、いずれ潰れる。」と人の経済力や支払い能力をおとしめる嘘をついたり、「あそこのエステはサービスが悪い」とサービスの質をおとしめる嘘をついたりすると成立する可能性があります。

【詳細記事】信用毀損罪とは:「構成要件」「成立要件」「例」を交えて詳しく解説

 

誹謗中傷で問われる民事上の責任

 誹謗中傷は以上に挙げた罪に問われるだけでなく、民事(民法に関すること)上の責任も問われます。
 とういのも、民法(個人の権利・義務等を規律する法律)では、何かしらの理由で損害を負った場合、損害賠償責任を問える旨が明記されています。

 そのため、誹謗中傷を罪に問うことが出来なくても、民事上の責任として、損害賠償請求をすることが可能なのです。
 では、どのような民事上の責任に問うことが出来るのでしょうか。以下の2つが挙げられます。

プライバシーの侵害

 プライバシーは、他人に知られたくないその人固有の秘密を総称した言葉です。プライバシーは、民法で保護されています。
 そのプライバシーが、みだりに第三者に公開される、プライバシーの侵害として、損害賠償責任に問うことが出来ます。
 例えば、「Aさんは、××に勤めている」という情報が暴露されたとします。それに対し、Aさんが暴露された事実に何かしらの不快感や不安を抱いた場合は、プライバシーの侵害に該当する可能性があります。

 過去には、プライバシーの侵害として80万円の損害賠償請求が命じられた『「宴のあと」事件』等があります。

【詳細記事】プライバシーの侵害とは?具体的にどんなことを指すのか簡単に解説

肖像権侵害

 肖像権とは、本人の許可なく顔や身体を、撮影・公表されない権利のことをいいます。その権利を侵害する行為のことを、肖像権侵害と呼びます。
 例えば、Aさんが無断でBさんを撮ったとします。Aさんが無断でBさんの写真をSNSに投稿すると、肖像権の侵害に当たる可能性があります。

 過去の判例では、俳優が写真をばらまかれたケースで20万円、作家の妻が盗撮された写真が公開されたケースでは110万円の損害賠償額が発生しています。

【詳細記事】肖像権侵害とは?事例から解き明かす

 

誹謗中傷と弁護士

 もし、罪に問える、あるいは民事上の責任を問えるような誹謗中傷を受けている場合はどのように対処すればいいのでしょうか。
 昨今は、インターネットネット上のトラブル解決を得意分野とする弁護士が頭角を現しています。ですので、誹謗中傷を受けている方は、インターネット上のトラブルに強い弁護士に相談をすることが良策と言えるでしょう。

 弁護士に相談をすれば、誹謗中傷問題に対し、的確に対処してくれることが期待されます。