ネット上に他人の個人情報を晒すと「犯罪」「不法行為」が成立する

ネット上に他人の個人情報を晒すと「犯罪」「不法行為」が成立する

氏名や住所、電話番号等の個人情報は、誰もが、ネット上に公にされたくないでしょう。
しかし、報復・復讐の目的で、ネット上に個人情報が晒されるケースが起きています。

そのような行為は、犯罪もしくは不法行為が成立する可能性があります。

 

個人情報に該当するもの

そもそも、どのような情報が個人情報に当たるのでしょうか。
氏名や住所、電話番号等が個人情報に当たることは、みなさんもご存じでしょう。しかし、それ以外にも個人情報に該当するものがあります。
みなさんが既知のものも含めて、主に個人情報に該当するものを以下に列記します。

・氏名
・住所
・本籍地
・性別
・生年月日
・年齢
・マイナンバー
・電話番号
・勤務地
・職業
・収入額
・家族
・人間関係
・メールアドレス
・IPアドレス(ネット上の住所)情報
・現在地(例:GPS情報)

上記は、ほんの一部に過ぎません。それら以外にも個人情報に当たるものもあります。

 

個人情報晒しで成立する犯罪・不法行為

ネット上で他人の個人情報を無断で晒すと、具体的にどのような犯罪や不法行為が成立するのでしょうか。
以下でご説明させていただきます。

犯罪

ネット上で他人の個人情報を無断で晒すと、名誉棄損罪や公表罪が成立する可能性が考えられます。

【犯罪①】名誉棄損罪

名誉毀損罪とは、他人の社会的評価を下げる行為に対して課せられる罪のことを指します。名誉棄損罪は、3年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
例えば、以下のような個人情報の晒し行為に対し、名誉棄損罪が成立する可能性が考えられます。

・〇〇さんは△△さんの嫁と不倫関係にある
・〇〇さんは借金まみれになり自己破産をした過去がある

【関連記事】法律上の名誉毀損とは?わかりやすく解説

【犯罪②】公表罪

公表罪とは、被写体の人物を特定出来る方法で撮影された私事性的画像記録(第三者に見られることを認識・承諾されずに撮影された画像・動画)を、不特定多数または多数の人に公開する行為の対して課せられる罪のことをいいます。
公表罪が成立すると、3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。

公表罪は、性交渉や性交類の最中の写真・動画(挿入だけでなく、口や手での行為も含む)をネット上に晒すと、成立する可能性があります。

【犯罪③】脅迫罪

実際に個人情報が晒されなくても、「個人情報を晒すぞ!」と脅された場合は、脅迫罪が成立する可能性があります。
脅迫罪は、生命や身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者に対して課せられます。
 脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。

【関連記事】脅迫罪とは?簡単に分かるように解説

不法行為

ネット上で個人情報を晒すと、不法行為が成立する可能性があります。犯罪のように加害者に懲役や罰金を科すことは出来ませんが、慰謝料としての損害賠償請求を行うことが可能です。
具体的に、以下の不法行為が成立する可能性があります。

【不法行為①】プライバシーの侵害

プライバシーとは、秘密にしておきたい私生活に関することや、それにまつわる公開されたくない事柄等、その人固有の秘密を総称したもののことを指します。
プライバシーは、みだりに第三者に公開されない権利を持っています。そのプライバシー権を侵害することを、「プライバシーの侵害」と呼びます。

学校や勤務先に関する情報や、病歴、結婚・離婚歴等の身分行為の情報、LINE・DMのやりとりのスクショ画像等もプライバシー情報に挙げられます。但し、それらの情報が、事前に本人によってネット上に公開されている場合は、プライバシーの侵害に当たらない可能性があります。

【関連記事】LINEのやりとりをスクショした画像を勝手に晒すと法律違反になる

プライバシーの侵害の損害賠償額の相場は、10~50万円と考えられています。

【関連記事】プライバシーの侵害とは?具体的にどんなことを指すのか簡単に解説

【不法行為②】肖像権侵害

肖像権とは、本人の許可なく顔や身体を撮影・公表されない権利のことを指します。その権利を侵害されることを、肖像権侵害と呼びます。
写真や動画が、無断でネット上に公開された場合は肖像権侵害として、損害賠償請求を行うことが可能です。

過去の判例では、俳優が写真をばらまかれたケースで20万円、作家の妻が盗撮された写真が公開されたケースでは110万円の損害賠償額が発生しています。

【関連記事】肖像権侵害とは?事例から解き明かす

 

個人情報に該当しないケース

以上に挙げた個人情報の晒し行為にまつわる「犯罪」「不法行為」に該当したとしても、違法性を問われないケースもあります。
それは、晒された情報が「事実の公共性」「目的の公益性」「内容の真実性」に該当するケースです。

例えば、「政治家Aが不倫スキャンダルを起こした」とネット上に晒されたとします。その情報が真実であれば、有権者の投票行動の参考になります。そのため、公共性・公益性が高いとして、違法性はないと判断される可能性が高いです。

また、窃盗犯や詐欺師等の犯罪者を突き止める目的で、その人の個人情報を晒す行為は、「目的の公益性」があると見なされ、違法にならない可能性があります。