「インターネット上=完全な匿名」ではない!“開示請求”で犯人をあぶり出す

  • 2017.12.01
「インターネット上=完全な匿名」ではない!“開示請求”で犯人をあぶり出す

 インターネットの世界には、「匿名だから大丈夫」「何をしてもバレやしない」という安心感から、罵詈雑言がはびこっています。
 しかし、本当に完全匿名なのでしょうか。インターネット上で根も葉もない誹謗中傷を受けた時、犯人を特定するための”開示請求”についてお話いたします。

『匿名性』は100%ではない!?

 先に申し上げますと、インターネット上の匿名性は100%ではありません。それは、「『殺人予告』の罪で○○を逮捕」等といったニュースからも、想像が出来ます。
2008年6月8日、歩行者天国における「秋葉原通り魔事件」においても、警察の早すぎる対応を見て、「そもそも警察は加藤智大死刑囚の掲示板を見ていたのでは」と、インターネット上で憶測が飛び交いました。
また、国境を超えてテロリズムが蔓延する中、ISIS(イスラム国)についても、テロリストの声明からの犯人特定等が行われています。

インターネット上でのセキュリティ

日本の警察の初動捜査の源

 警察は「サイバーフォース」と呼ばれる、機動的技術部隊により収集された情報を分析し、インターネット上で発生している攻撃をいち早く発見、関係各機関へ情報提供をしています。
 そしてサイバーテロを未然に防ぎ被害の最小化を目指しているのです。

“国家権力”は例外的な特権なのか

 サイバーフォース擁する警察の捜査は、一見”国家権力”の下だからこそ犯人発見に関する特権を持っているように思われますが、そうではありません。
 そう、誰にでもインターネットの書込みの『犯人』を見つけられる余地があるのです。
 ここでのキーワードは、開示請求です。 

該当記事を削除してもらう

 さて、突然、自分に問題があるといった誹謗中傷を受けたらどうでしょうか。もしくは、自分のSNSが炎上していたらどうでしょうか。
 大抵の方は、「削除してもらいたい」と思われるでしょう。その手引がこちらです。
① 書込みをした本人が分かっている場合
② 書込みをした本人が分かっていない場合
以下、2パターンのご説明をいたします。

①書き込みをした本人が分かっている場合

 こちらは書込みをした本人に削除の依頼をすれば済むことです。しかし、100歩譲ってそれが相手の本意でなくとも(強迫や偶然等)、わざわざ誹謗中傷をするような人が削除に応じてくれるとは考えにくいでしょう。

②書込みをした本人が分かっていない場合

 実は、インターネットの世界では、誰が書き込んだのかが分からなくても、誹謗中傷を受けたサイトを削除出来る可能性があります
 書き込んだ人が分からない場合は、サイト運営者やサーバ会社に削除を求めるという方法です。

削除の依頼の仕方

 突然誹謗中傷・炎上が起こると、その対応にパニック状態になりそうですが、落ち着いて、管理者に連絡をしましょう。
連絡方法は、サイト内の連絡用フォーム・問い合先・掲示板など、ホームページにより様々です。その際、管理人との連絡手段が無記載であれば、運営会社・サーバ会社を調べて「送信防止措置依頼」を送付します。
依頼は、該当する書込みが記載されているURL、内容、削除して欲しい理由、自分の立場を一通り明記します。
また、証拠を求められる場合もあるため、該当ページの印刷、画像でも保存を忘れないようにしましょう。

奥の手の“開示請求”

 それでもどうしても対応がなされなければ、警察のはたらき部分でキーワードとした、“開示請求”という手段をとります。

インターネットサービスプロバイダの役割

 インターネットは、全世界の数多ある小さなネットワークを相互に接続して築き上げられた巨大なコンピュータ・ネットワークです。しかし、これだけでは、パソコンやスマートフォンといった端末がインターネットに接続することは出来ません。それでは一体どうしたらよいのか―――そう、“プロバイダ”と契約する必要があるのです(但し、最近は無料のWi-Fiが登場したため、プロバイダ契約が「絶対」ではなくなりました)。
 ちなみにプロバイダ会社とは、OCN,NTTドコモ,KDDI等の、通信サービスを担う事業者を指します。
 基本的には、このような“インターネットサービスプロバイダ(以下ISP)”と契約することにより、インターネットに接続出来るようになります。
 ISPと契約し、インターネットに接続すると、ブログ・掲示板・動画サイト・SNS・ショッピングサイト・企業のホームページ等、あらゆるサイトをを見られるようになります。
 これらの「情報」は、そのサイトの情報が保管されているサーバが存在しているからこそ、見ることが出来るのです。
 換言すれば、「インターネットを見ることは、見たい情報が保管されているサーバに接続すること」なのです。

個人 個人 個人 個人 ⇐一般ユーザー
ISP ISP ISP ⇐インターネットサービスプロバイダ
インターネット ⇐コンテンツプロバイダ(インターネット上でのサービス提供の主体)
ブログ 掲示板 サイト SNS

 この図が示しているのは、「サイトを閲覧したり書込みをしたりするためには、まずISPに接続⇒次にコンテンツプロバイダに接続する」、という順番です。
 突然出てきたこの「コンテンツプロバイダ」をごく簡単に言うと、ISPを通じて閲覧したい「目的のサイト」、のことで、インターネット上でのサービス提供の主体です。

パソコンに残った指紋

書込み犯を特定する

 以上のことを踏まえた上で、書込みをした人物を特定するためには、ISPに働きかけます。というのも、ISPは、契約者が利用料を支払っているため、契約者の氏名や住所を把握しています
 そのため、契約者の情報を持っている各ISPに契約者の情報を「開示」してもらえばよいのです。

開示まで

 しかし、単純に考えて、世界中の誰がどのISPと契約しているのか、ということは、他人には分かりません。そのため、いきなりISPに開示請求をしても、ISP自体もユーザーが誰かは分かりません。
 そこで、ユーザーを調べるためには、インターネットを接続した時の逆の手順を踏みます。
 どのような流れかというと、
① コンテンツプロバイダにコンタクト
↓(接続した人の情報(IPアドレス等)を開示してもらう)
② 開示された情報を元にISPに更なる開示請求
この手順により、誹謗中傷・炎上を起こした人物の特定が出来るのです。
 なお、書込みをしている人物を特定する手続を、発信者情報開示請求と言います。

例外的事案

 但し、コンテンツプロバイダから開示された情報が、ProxyサーバやTorサーバといった匿名化技術を利用している場合には、残念ながら人物の特定は出来ません。

損害賠償請求を視野に

 削除が成功し、開示請求まで行うのであれば、損害賠償請求も選択肢の1つに入るでしょう。「発信者情報開示請求」は、新しい情報・知識による係争になることが見込まれるため、初期の段階から弁護士に入ってもらうことをおすすめします

サイバー警察

終わりに

 「インターネットに投稿されたら、一生消すことが出来ない」と思っていた方はいらっしゃいませんか?人には知られたくない情報をアップされ、涙を飲んだ方もいらっしゃると思います。
 ですが、各プロバイダに対し、ご紹介した開示請求をすれば、光明は見えてきます。
 但し注意しなければならないのが、一般的なウェブ知識を上回る知識を兼ね備えたユーザーは、抜け道を完全に知り抜いている、つまり、ほとんど絶対に捕まらない、ということです。
 そのような場合は、インターネットの社会において多方面からの調査を得意とする弁護士に相談し、犯人をあぶり出していきましょう。