『炎上』を防ぐ対策<企業編>

  • 2018.04.02
『炎上』を防ぐ対策<企業編>

アルバイトたった1人の”炎上”のせいで、企業が倒産の危機に瀕する―――インターネット環境の劇的な拡大化の中で、そのような事態に陥る可能性は、日を追うごとに増加しています。
それは、「個人」の失態によるダメージが、「個人」ではなく「(その人が勤める)企業」にまで及ぶ、という危険性を孕んでいます。そのため、『炎上』を防ぐための従業員(管理職、正社員からアルバイトまで)に対するインターネットリテラシーの心得は、なくてはならないものになりました。

“炎上”は老若男女不問で火がつく

勘違いされやすいのが、「”炎上”は、社会経験の乏しい若者が起こすもの」、という先入観です。これは一見そうかもしれないと納得してしまう人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
例えば40代以上の人でも非常識な書込みで炎上させることはありますし、管理職が発信した情報が炎上事件になったという例はいくつもあります。炎上は、年齢や社会的地位等に関係なく、すべからく起きる可能性があるのです。
それを表すかのように、現に、71歳を迎えたトランプ米国大統領の「Twitter」での”炎上(?)”はニュースでも多々取り上げられています。

デスク上のパソコンとカレンダー

従業員教育の重要性

従業員が個人のSNSにせよ企業のSNS・HPにせよ、炎上してしまうような書込みをする原因は、どのような書込みが火種(危険因子)になるかを分かっていないことにあります。そこで炎上を避けるには、問題とされやすい書込みの傾向を知ることが第一歩になります。

“問題の傾向”を知る

そのためには、企業として炎上の恐ろしさや影響力のほか、どのような場合に炎上が発生しやすいのかについて、研修等を通じて社内に伝えることが大切です。
実際に、「自分に限っては大丈夫」とタカをくくっていて、「炎上が自分にも起こり得る」と肌感で気づいている人はほとんどいません。
そのような場合には、過去の炎上事件等を題材に、どのような書込みが炎上するのか、また、炎上したら自分はどうなってしまうのか、企業に及ぼす影響はいかほどか、ということを実感するのが重要です。

従業員への研修

企業の『炎上』対策として、従業員にSNS教育研修を行うことは非常に有効です。研修を行うことで、ソーシャルメディアガイドラインをより早く、より正確に、よく深く、従業員に浸透させることが期待できます。
パートやアルバイトを多く採用している流通・小売・飲食等の業種では、研修を特に重要視し力を入れるべきだと言えます。なぜなら、これらの業界は人の回転が早く、ソーシャルメディアガイドラインに限らず、企業の経営理念や経営方針等が全従業員に浸透しづらいからです。

社会常識の欠如

2011年頃、いわゆる「バイトテロ」が多数報道されました。バイトテロとは、飲食店や小売店にアルバイトの形態で雇用されている店員が、店の食品や什器を使用して悪ふざけを行う様子をスマートフォンなので撮影し、SNSに投稿して炎上する現象を指す日本語の造語です。

このような写真が拡散されるのを見ていると、上述の「従業員への研修」では、”食品の上に乗らない”、”アイスケースには入らない”といった指導と説明まで必要なのかと、社会常識の著しい欠如が見受けられ途方に暮れます。

従業員の一言が揺るがす企業全体のイメージ

従業員の投稿で炎上事件に発展した場合、その原因は種々雑多です。暴言、非常識な発言、他社批判、自社批判、悪ふざけ、想定外の炎上等……これら全てが企業のイメージと直結します。

責任の所在

企業名や職業等、個人や勤務先が特定出来る個人情報をSNSで公表している従業員が『炎上』を起こした場合、責任を問われるのは従業員個人だけでなく、そのほとんどを勤務先の企業が負います
それは、正社員かアルバイトかといった雇用形態はもちろん、プライベート利用かどうかといったことでさえ不問です。

失言から炎上へ

インターネットは何をしてもよい場所だと考えている人もいますし、インターネット上には「モラルが存在しない」と信じ込んでいる人もいます。しかし、一般常識や見識が疑われるような書込みに対しては、インターネットの世界は極めて厳しい反応を見せ、一斉にバッシングする傾向があります。
そのような場合は、必要最低限な情報発信をした後、解決の目処が立つまで一旦停止させましょう。この場合の停止とは、アカウントやコンテンツの「削除」ではなく、むやみな投稿をストップして様子を見ることを言います。

消化している風景

顧客マニュアルの整備

企業全体より、「従業員の対応が問題だった」として『炎上』する事例は数多あります。従業員のおざなりな顧客対応について告発するようなブログやSNSは多く、同じような対応を受けたとする人がコメント欄に投稿したり、SNSで共有したりすることもあります

クレームの時点で火消しに急ぐ

火種を悪化させないために、まずは先手を取りましょう。第一手のポイントは、その従業員の”地位”です。
仮に、クレームの電話がきたとします。その際、「アルバイトである○○が、申し訳ありませんでした」という対応は絶対にしてはなりません
なぜなら、お客様から見て従業員は、社員であろうとアルバイトであろうと関係ありません。しかも、「アルバイト」という単語に全ての罪を着せているようにも捉えられかねません。

全員が把握すべき鎮火方法を会得

顧客に不満を残さない対応をするための研修は、顧客対応マニュアルを整備し、それを個々の従業員が実践出来るようにする、と、コスト管理の点からすると難しいものがあります。
しかし、そのような努力により、『炎上』のターゲットである失言を、かなりの数で減らすことが出来ます。一見高い買物のように思われますが、お客様の満足度を上げることは、後々のコストパフォマンスを視野に入れると、結果的にはよい結果に繋がるでしょう。

パソコンで仕事をしている風景

チャイニーズ・ウォールの設定

2011年1月に、都内のホテルのレストランアルバイトとして勤務する大学生があるツイートをしました。
それは、現在スポーツ選手とファッションモデルがお忍びデートをしており、更に、これから宿泊する、という内容でした。
すると、一般ユーザーから、ホテル従業員が顧客情報を開示するのは問題だという指摘を受け、ひどい『炎上』を招いてしまいました。

火に油を注いだアルバイト

この事件では、レストランのアルバイト従業員である1人の大学生が、デートや食事にとどまることなく、宿泊することまで知っていたのです。そしてそれはその点でも、炎上を拡大させた要因になりました。

チャイニーズ・ウォール

チャイニーズ・ウォールとは、企業の部署間の情報障壁のことです。他の部署の情報に触れられないようにしておくことが、情報流出の際には有効であるため、情報障壁を整えることも『炎上』対策としては有効です。

就業規則、ソーシャルメディアガイドラインの整備

一般的に、企業が従業員に懲戒等を行うためには、”就業規則”で懲戒事由懲戒の内容を定めることが必要ですが、それはインターネットの世界においても同じことが言えます。

根本の問題はどちらも同じ

上述の”就業規則”には、「社内の秩序および風紀を乱した時」や、「会社に損害を与えた時」には、懲戒事由に当たる、としている企業が多いです。それはインターネット上でも同一であるため、「インターネット専用の就業規則」を改めて作る必要性は低いです。
但し、「秩序を乱した時」「損害を与えた時」にまでは当たらないものの、何らかの処分は講じたい、という場合には、よりきめ細かい規則も必要でしょう。
であれば、SNS等の利用に関する懲戒事由とは、どんな問題行動なのでしょうか。次のように定められています。

就業規則(例)
従業員は、ソーシャルメディアを利用して情報発信を行う際、次の各号に掲げる情報を発信してはならず、これに該当する事実が認められた場合は、就業規則第○条に基づき懲戒処分を行う。
① 誹謗中傷、他人のプライバシーその他の権利を侵害する情報
② 職務上知り得た秘密や個人情報を含む情報
③ 人種、思想、信条等の差別、または差別を助長させる情報
④ 違法行為または違法行為を煽る情報
⑤ 単なる噂を助長させる情報
⑥ わいせつな内容を含むホームページへのリンクを含む情報
⑦ その他公序良俗に反する一切の情報

懲戒事由を含む就業規則を定めるためには、事業所の過半数代表の意見を聴取したり、労働基準監督署に届けたりする等、非常に手間がかかります。そこで、就業規則に準ずるものとして、ソーシャルメディアガイドラインを設けることも、1つの方法です。

SNS

ソーシャルメディアガイドライン作成時の注意点

ソーシャルメディアガイドラインを作成する際は、次の2つの視点が重要です。
○リスク予防の視線
○問題発生時の対応手順という視点
ソーシャルメディアガイドラインには、違反した場合の罰則を定めるか否かの選択肢があります。と言うのも、罰則を設けることで、ソーシャルメディア上の動きが敢えて鈍くなる可能性があるからです。
しかし、そもそも規則ではない単なるガイドラインであれば、これに基づいた懲戒も出来ないはずだと言えるでしょう。
なお、ソーシャルメディアガイドラインは、インターネット上に公開しておくメリットもあります。例えば従業員が『炎上』に巻き込まれても、「企業としてはこのように教育をしていた」と、主張出来る余地が生じるため、企業が批判を避けられる抜け道が出来るためです。

終わりに

確かに「従業員にSNS対策の研修を行う」ということは、労力も資金もかかります。ですが、そのような地道な努力を怠り、のちのち企業全体にダメージを受ける事態と比べたら、どちらを優先させるかは言わずもがなでしょう。
本記事が、”社長からアルバイトまでクリーンな会社”を目指し実現する指針となれば幸いです。