“風評被害”×不可避=恐怖

  • 2018.04.10
“風評被害”×不可避=恐怖

スマートフォンの普及は情報取得を容易にし、多大な利便性をもたらしました。それは同時に、手軽で安易な情報発信も可能にし、些細な書込みから、『風評被害』(や、『誹謗中傷』)を生み出しました。
ここで問題とされる『風評』とは、事実無根の噂を指します。

風評被害の特徴

まず風評被害とは、事実無根の噂なのにもかかわらず、”悪い情報ほど、すぐに周りに知れ渡る、という特性を持ちます。その原因としては、人間の心理の中に、ネガティブな情報ほど信じやすい傾向があるからです。

ココロのバイアス

そのような傾向を、心理学では「ネガティブ・バイアス」と呼んでいます。これは、ポジティブな情報がたくさんあっても、1つネガティブな情報に触れてしまうと、人はその情報の影響下に置かれてしまう、という心理です。

ビジネスパートナーの「風評」を聞いたら

本来ならば、企業や個人の「風評」を耳にした時、その情報が本当かどうか、きちんと確認するはずです。特にビジネスの現場では、相手の情報・状況は、その後の仕事に大きく影響するので、当然のことでしょう。

インターネット世界のバイアス

しかし「風評」の出処がインターネットの場合、上述の通り、人はネガティブな情報は信じ込んでしまいやすいのです。
その上、場合によって「風評の情報」は更に捻じ曲げられて拡散される傾向があります。

風評と災害

風評が広がるのは特殊な場合だけだと思う方も一定数いるようです。確かに、事件・事態・災害が起きた等の非常事態では、より風評が起こりやすくなると言われています。
ですが、現在では、風評被害は誰にでも起こり得る時代に突入したと言えるでしょう。

日本の転換期

まず、日本のインターネット環境のターニングポイントとなったのは1995年で、そのきっかけとなったのは、阪神・淡路大震災でした。火事を伴った大地震は、インフラをことごとく寸断し、周りからは被災地での安否や被害レベルが分からず、一時的に情報も伝わりにくくなりました。

非常時の”風評”

このような時に現場を席巻するのが、「風評」です。特に大地震の直後には風評が伝わり、被災者はもちろんのこと、周りの人たちも間違った情報を信じてしまうものです。阪神・淡路大震災でも、そうなる危険が十分にありました。

非常時から日常へ

しかし、阪神・淡路大震災から20年以上が経過した今、阪神・淡路大震災によって種がまかれた『風評被害』は、日常生活の中でも次々と発芽するようになりました。
それはスマートフォンやインターネットがより身近な存在になり、それと共にSNSの利用が加速したためだと言えるでしょう。

雰囲気

実際に起こった風評被害

ここで、阪神・淡路大震災以降に発生した、風評被害巻き起こした事件・事態・災害をご紹介します。

10年ぶりの口蹄疫発生

2010年4月、10年ぶりに宮崎県で口蹄疫が流行しました。
家畜への被害はウシ69,454頭、ブタ227,949頭、その他405頭となり、甚大な被害が発生しました。
しかしもっと大きな被害となったのが、宮崎ナンバーの運送業者の積み荷が、徹底した消毒を行っていたにも関わらず、県外での受け取りを拒否された、という事件です。
「口蹄疫」という風評被害が招いた宮崎県の畜産物農家を襲った事例でした。

東北地方太平洋沖地震

2011年に3月に発生した、いわゆる「東日本大震災」です。津波による被害に日本中が戦慄した地震でしたが、他にも取り沙汰されたのが、福島県の原子力発電所の問題でした。
今日においては、汚染レベルを測って人体に影響のない農作物を出荷しているものの、今もなお「福島県産」等の商品を避ける消費者もいます。
「放射能汚染」という単語だけの風評被害が福島県の農家を直撃した事態でした。

炎

消えないデマ、再燃するデマ

これもインターネットの特徴ですが、一度書き込まれた情報は、削除されない限り、半永久的に残り続けます。それは、被害者側にとってどのような効果を及ぼすのでしょうか。

デマ情報

例えば、勤めている会社が「ブラック企業」等と書き込みされたとします。それが真実ではないからいずれは消えるだろうと放置していると、命取りになります
はじめは単体の「ブラック企業」という小さな風評被害から始まったため、それを根も葉もないことだ、と放置してしまったとします。ましてやこちらに落ち度がないので、反論する気にもならないのは当然です。
しかし、対策を取らずに過ごしていたら、その風評被害が大きくなり、結果、倒産にまで追い詰められた、という企業もあるのです。
「ネガティブな情報は信じやすい」のは、関連者側も同じことなのです。

デマ再燃

更に怖いことに、その痕跡が残っている限り、何かのきっかけでそれが再燃、再炎上する可能性があるということです。そのような状況下では、常に炎上の恐怖の影に怯えながら過ごさねばならないことを意味します。
そもそも、そのような書込みの多くは、いつ、それが起きたかが書いていません。その結果、一般ユーザーはそれが、過去のことか、つい最近の出来事か判断出来ません。こうしてそれが再び、炎上の火種になるわけです。
風評被害を事前に防ぐため、企業の広報・ウェブ担当者は、日々会社にまつわる火種をチェックする必要があります。
具体的には、検索エンジンに自社の名前や代表者名、あるいは会社で人気のある商品やブランド品を入力して、怪しい情報が出ていないかを調べます。
これは一見地味で小さな作業ですが、インターネット風評被害を防ぐ確実な方法です。

火炎放射

ターゲットは老若男女不問

インターネット風評被害のターゲットとなるのは、芸能人や大手企業に限りません。このご時世ではもはや、誰でもその被害にあう可能性があります。

個人が個人に与えるダメージ

極端な話、ある人のこと嫌いな人がいたとします。そこで”ある人”が、相手のことを誹謗中傷する、暴言を吐く、あるいは嘘をでっち上げる等して風評を拡散することは容易です。
厄介なのは、それが真っ赤な嘘ででも、読んだ人がそう信じてしまうことです。

かかるのはカネと時間

風評被害が起きると、すぐさま対応をしなければなりません。
大企業の場合は、クレーム対策の部署がありますが、中小企業では、その商品を担当する営業マンがその対応に当たる場合が多いのが現実です。
その場合、余計な時間と人件費がかかり、クレーム処理まで担当していたら、営業マンの通常業務にまで支障をきたすことになるからです。
そこで、クレーム対応のみを外注する方法もありますが、現実的ではありません。と言うのは、例えば、クレーム対応に特化しているある電話代行会社に外注すると、24時間対応でクレームのコールが月に400件までで約10万円。それ以上になると、一件につき350円の追加料金がかかります。
ちなみに、これは受信だけなので、発信も依頼すると、それ以上のコストがかかります。

「匿名性」信奉

これほどまでに便利な世の中になったのには、インターネットの「匿名性」が強く寄与していると言えるでしょう。匿名であれば、誰もが忌憚なき感想や評価を出来ます
つまるところ、人間のモラル、マナーがしっかりしていれば、風評被害等という問題は起きないはずです。

「匿名なら何も怖くない」

ですが、今日においては、多くの人が「匿名だから悪口を書いても見つからない」、「相手を批判しても分からないだろう」、という安易な考えのもと、簡単に企業や個人を攻撃し、ストレス発散ゲームかのように振る舞います。
しかし、匿名の記事でも誰が書いたかを調べる方法はきちんと存在します。あまりにひどい場合や犯罪の可能性が高い場合には、加害者を徹底的に調べることも可能なのです。

「匿名性」は完ぺきではない

上記の方法で加害人物が特定されれば、裁判を起こして名誉毀損で訴えたり、損害賠償を請求することが出来ます(但し、裁判を起こすにはそれ相応の費用がかかり、判決が出るまでには時間がかかるので、今すぐ何とかしたいという場合には向きません)。

終わりに

「インターネットでの風評被害」が持つポテンシャルは恐怖の桁が違います。
というのは、規制が現状に全く追いついていないため、インターネットは無法地帯と化し、やりたい放題になっているのです。更にその手口も巧妙化、陰湿化しています。
風評被害は正しい理解と迅速な行動で、いつ自分が巻き込まれても対処できる自衛策を投じることが重要です。本来であれば風評被害を避ける方法をお知らせしたいのですが、いつ・どこでも起こるか分からないからこそ恐ろしいのが風評被害なので、それは不可避である、としか言えないのが現代のリアルなのです。