これって違反?ネットに関するコンプライアンスQ&A

これって違反?ネットに関するコンプライアンスQ&A

 「コンプライアンス」という言葉を耳にしたことのある人は多いと思います。近年の相次ぐ企業の不祥事で、知られるようになった言葉です。

 この記事では、ネットに関するコンプライアンスについて、Q&A方式でお伝えしていきます。

【Q&A①】コンプライアンスとは?

Q.「コンプライアンスって言葉を会社でよく聞くけどどういう意味?」

A.「『コンプライアンス』とは、日本語で『法令遵守』と訳します。企業が、法律や倫理(モラル)を尊守しましょうという意味で使われています。
 
 近年、企業は営利だけでなく、社会的責任も全うすることが求められています。法令だけではなく、高い企業倫理も求められています。
 

【Q&A②】ネットに上司の悪口を書いていた

Q、「上司に理不尽なことで怒られ、納得できず怒りさえ覚えました。帰宅しても怒りが収まらなかったので、ネットの掲示板に『〇〇部長は部下にパワハラする』と書き込みをしました。これはコンプライアンス違反に該当しますか?

A.「コンプライアンス違反になる可能性があります。
会社員は、睡眠時間を除くと1日の殆どを会社で過ごしています。長時間過ごす場所では、ストレスを感じることも多いことでしょう。
 ですが、そのストレスをネットの掲示板にぶつけることは、誹謗中傷に該当する可能性があります。場合によっては、名誉毀損罪(刑法230条)など法律に違反します。

 理不尽なことで怒られたと感じた場合は、仲の良い同僚などに相談してみることが良いでしょう。」

【Q&A③】勤務している店舗に芸能人が来店したことをSNSに投稿した

Q.「勤務するホテルに、人気女優が宿泊していることをSNSに投稿しました。芸能人なんだから、ある程度はプライベートはネットに晒されても仕方がないと思いましたが、上司から強く叱責を受けてしまいました。なぜ、芸能人の行動をSNSに投稿することはダメなのですか?」

A.「業務上の守秘義務に違反する可能性があります。多くのホテルで勤務する従業員には、宿泊客の情報を一切に外部に漏らさないなどの守秘義務があります。したがって、宿泊客の情報をSNSに掲載することは禁止されており、コンプライアンス違反に該当する可能性があります。
 また、有名人であっても宿泊先のホテルをネットに晒されることは、プライバシーの侵害に該当することも考えられます。

 なんでも気軽に投稿してしまいがちのSNSですが、モラルを持った言動が求められます。」

【Q&A④】口コミサイトに競合他社の商品の悪評を書いた

Q.「私が勤務する企業は、業界シェア1位を誇っています。ですが、最近2位の企業が業績を伸ばしているため、危機感を覚えた私は口コミサイトに悪評を書き続けました。ライバル社の商品、企業イメージが悪くなるような内容を投稿していたところ、書き込みをしている人物が、当社の社員ではないかと指摘されてしまいました。現在、当社のコンプライアンス担当役員が調査に乗り出しています。
 競合他社に抜かれないために行った行為ですが、書き込みを行っているのが私だと知られた場合、どうなるのでしょうか?」

A.「他社の商品の悪評やイメージを損なうような内容をネットに書き込むことは、誹謗中傷に該当する可能性があります。場合によっては名誉毀損(刑法230条)、信用毀損(刑法233条)に違反することもあります。
 つまり、競合他社から訴えられる可能性はゼロではありません。

 ネットで競合他社へ誹謗中傷を繰り返していたことが明るみになれば、自社のイメージダウンとなり得ます。
 書き込みを行った人物は、処分がくだされる可能性があります。」

【Q&A⑤】業務時間中に会社のPCで業務と関係無いサイトを見ていた

Q.「隣の席の男性同僚が、勤務時間内に業務とは関係ないサイトを頻繁に見ています。これって、コンプライアンス違反ですよね?」

A.「勤務時間内に業務と一切関係のないサイトを閲覧することは、職務専念義務違反に該当する可能性があり、コンプライアンス違反となり得ます。」

【Q&A⑥】新製品の発売が発表される前にSNSに情報を投稿した

Q.「自社の社運を欠けた新商品が発売されることになり、少しでも早くPRをしようと、リリース前ではありましたがSNSで情報発信しました。すると、『報道発表前に言って大丈夫?』『クビになるよ!』など指摘するコメントが多く寄せられました。」

A.「企業が正式に発表する前の情報をSNSに掲載すると、守秘義務違反に該当する可能性があります。新商品発売を発表するタイミングも企業にとっては戦略のひとつです。

 SNSは、誰もが気軽に情報発信できるというメリットがありますが、送信ボタンを押す前にもう一度よく考えてから投稿するように心がけたほうが良いでしょう。」

【Q&A⑦】入社式で受け取った社員証をSNSに投稿した

Q.「大学を卒業した私は、入社式で社員証が交付されました。社会人になったという嬉しさから社員証をSNSに投稿してしまいました。
その後、新入社員研修で社員証をSNSに投稿する行為は、危機管理意識が乏しすぎると注意を受けてしまいした。」

A.「社員証には、会社名、氏名、生年月日など個人情報が記載されています。そのため、SNSに社員証を投稿することは、個人情報を晒す行為となります。

 企業は、個人情報保護法に基づいて、顧客などの個人情報を慎重に管理しています。今後、社会人として働く新入社員が、気軽に社員証をSNSに投稿するという行為は、個人情報の取扱いに対する危機管理への考えが甘いと危惧されたのでしょう。」

ネットに強い弁護士に相談

 平成に入り普及しはじめたネットは、今や企業にとってデータ管理やビジネスツールなどで欠かせない存在となっています。業務の効率化を図るなどのメリットがある一方で、企業への誹謗中傷や個人情報の漏えいなどデメリットがあることも事実です。

 このようなデメリットが実際に発生した場合、問題を解決するためには法律の知識のほか、ネットワークの仕組みなどIT全般の知識が必要になります。
 そこで、現代では「ネットに強い弁護士」の活躍が目立っています。

 弁護士中でネットの知識を併せ持つ人は少ないと言えるでしょう。ですが、ネット上のトラブルは相次いで発生することで、ネットに強い弁護士は重宝されます。
 企業の中には、ネットに強い弁護士を確保しようと顧問に迎える動きもあり、それぞれがネットトラブルへの対策を講じています。

 企業への誹謗中傷や個人情報漏えいなどのトラブルは、企業の大きなイメージダウンになり得ます。
 ネットのトラブルは、ネットに強い弁護士に相談することで、スムーズに解決に向かうことが予想されます。