ネット上でトラブルが起きた際、解決策として挙げられるのが、問題が起きたサイトの運営者に削除依頼をする方法ではないでしょうか。しかし、削除依頼に応じてくれないケースも少なくありません。
そこで、次の一手として仮処分が挙げられます。仮処分とは一体どのような手続のことを指すのでしょうか。
今回は、仮処分を分かりやすくご説明させていただきます。
仮処分とは
仮処分とは、裁判をせずに勝訴(裁判で勝つこと)時と同じ状態を確保する手続のことをいいます。
一般的に、裁判は判決が下されるまでに1年前後、あるいはそれ以上の期間を要します。対して、仮処分は、数日から数週間で手続が完了するのが通例です。
ですので、判決が下されるのを待っていては、状況が大きく変わってしまう等の事情を抱えている方等に、仮処分は有効な手続なのです。
仮処分が認められる条件
仮処分は、手続をすれば必ず認められるとは限りません。裁判の判決が下されるのを待っていては、著しい損害が生じたり差し迫った危険があったり等の特別な事情がある場合に限り仮処分は認められます。
仮処分の進め方
仮処分はどのようなステップを踏んで手続が行われるのでしょうか。以下のような流れで手続が行われます。
①裁判所に申立を行う
②申立者と裁判官が面談をする
③相手方に対して意見や主張を聞く
④裁判所から仮処分の判決が下される
但し、申立者と相手方、双方の意見を聞き裁判所が仮処分を行う必要性がないという判断をすれば、仮処分の発令は行われません。
仮処分実用例
仮処分はどのようなケースで行われるのでしょうか。ここでは、仮処分の実用例を3つご紹介させていただきます。
①金員仮払い
金員仮払いとは、仮で相手にお金を支払わせることをいいます。
例えば、交通事故の被害者が、加害者に損害賠償請求をしている一方で、車の修理費にお金を当てたため、生活費がひっ迫しているとします。裁判の判決を待っていては、被害者の生活が危ぶまれます。このような緊急を要する事態の場合、金員仮払いという方法を採って仮処分が行われます。
②建設工事をストップさせる
建設工事をストップさせる際にも、仮処分が用いられます。
例えば、自身の土地に無断でフェンスが作られるとします。それを止めるために裁判を起こしたとしても、判決が下されるのを待っていてはフェンスの建設は進みます。フェンスが建てば、自身の家に日光が当たらなくなり日照権の侵害等の問題が起こるかもしれません。
そうならないよう、フェンスの建設をストップさせるために仮処分が用いられます。
③プライバシーの侵害
冒頭でも触れた通り、ネット上のトラブルが起きた際にも仮処分が用いられます。ネット上のトラブルは、拡散される危険性があるため早期の解決が求められます。
例えば、SNS上でプライバシーの侵害を受けた人がいるとします。その被害者が、プライバシーの侵害を受けたとして裁判を起こしても、判決が下されるまでに問題のある情報が拡散される可能性があります。そこで、拡散を防ぐために仮処分が用いられるケースは少なくありません。