どこからがネットストーカー?法律から紐解く

 近年のネットの発展によって、知り合いでない人とコンタクトを取れるようになっています。
 ネットの発達は、様々な利便性をもたらす一方で、新しい犯罪も生み出しています。

 そう、ネットストーカーです。

 ネットを利用して特定の人物につきまとうネットストーカーは、増加傾向にあります。ですが、ネットストーカーは、比較的新しい犯罪であるため、どこからがネットストーカーに当たるのかについての知識が浸透されていません。

 そこで今回は、どこからがネットストーカーに当たるのか、について法律から紐解いていきたいと思います。

 

ネットストーカーとストーカー規制法

 ネットストーカーの基準となるのが、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(通称:ストーカー規制法)」で定められている「ストーカー行為」です。
 その「ストーカー行為」を紐解くことで、どこからネットストーカーが該当するのかが見えてきます。

 

ストーカー行為とは

 ストーカー規制法では、以下の2つの条件を満たすと「ストーカー行為」に当たるという内容の規定があります。

①恋愛感情や好意を満たす目的で、特定の者あるいはその親族に対してつきまとい等を繰り返す
②「①」によって身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害される、あるいは、行動の自由が著しく害され不安を覚える

 なお①は、恋愛感情や行為が満たされなかったことによって生まれた、恨みや妬みを満たす目的で行うつきまとい等も対象になります。

 ①の「つきまとい等」は、説明が必要になるので、深堀りしていきましょう。

「つきまとい等」に当たる行為

 「つきまとい等」と一口に言っても、それに当たる行為は多岐に渡ります。ストーカ規制法では、以下8つの行為が「つきまとい等」に該当すると定められています。

【1】つきまとい
【2】監視していると告げる行為
【3】面会や交際の要求
【4】乱暴な言動
【5】電話・FAX・電子メールを利用したつきまとい
【6】汚物等の送付
【7】名誉を傷つける
【8】性的羞恥心の侵害

 では、上記【1】~【8】をひとつずつ見ていきましょう

【1】つきまとい

 つきまといには、以下のような行為が該当します。

■通勤途中や外出先等の行動先での待ち伏せ・尾行
■進路への立ち塞がり
■住居への押し掛け
■勤務先・学校への押し掛け
■勤務先・学校の付近で見張り・うろつき

【2】監視していると告げる行為

 監視していると告げる行為は、以下のような行動が該当します。

■メール・電話・ネット掲示板等で「監視している」と告げる行為
■メール・電話・ネット掲示板等で「おかえりなさい」と告げ、監視していることを暗示する行為

【3】面会や交際を要求

 面会や交際の要求には、以下が該当します。

■義務のない面会・交際・復縁等の要求
■贈り物を受け取るよう要求

【4】乱暴な言動

 乱暴な言動は、以下が挙げられます。

■大声で「バカヤロー」等と怒鳴る
■「コノヤロー」等の粗暴な内容のメールを送る
■家の前で車のクラクションを鳴らす

【5】電話・FAX・電子メールを利用したつきまとい

 電話・FAX・電子メールを利用したつきまといには、以下が挙げられます。

■無言電話
■拒否しているにも関わらず行う、連続した架電
■拒否しているにも関わらず行う、FAX・電子メールの送信

【6】汚物等の送付

 汚物や動物の死体等、不快感や嫌悪感を与えるものを自宅や職場等に送り付ける行為が、「汚物等の送付」に該当します。

【7】名誉を傷つける

 名誉を傷つけるような行為が該当します。名誉を傷つける行為は、名誉毀損が基準になります。
ストーカー規制法では、名誉を傷つける方法に限定はされていません。ですので、電話やFAX、電子メール、SNSのダイレクトメッセージ、ネット上の書き込み全てが該当します。

【8】性的羞恥心の侵害

 性的羞恥心の侵害には、以下のような行為が該当します。

■わいせつな写真を、自宅に送り付ける行為
■メールやSNSを利用した、わいせつ画像の送付
■手紙・メール・SNSを利用した、卑わいな言葉を告げる行為

 性的羞恥心の侵害も、「【7】名誉を傷つける」と同様、方法が限定されていません。電話やFAX、電子メール、SNSのダイレクトメッセージ、ネット上の書き込み全てが該当します。

 

ネットストーカーに該当しない行為

 以上でストーカー行為に触れてきましたが、ネットストーカーの場合、ネットを介したストーカーになるため、方法が異なるケースがあります。そのため、ストーカー規制法で定められているストーカー行為についてご理解いただいたとしても、「この場合はネットストーカーに当たるのかな?」という、疑問符が残る行為もあるのではないでしょうか。

 ここからは、ネットストーカーに当たるようで当たらない行為をご紹介します。

見るだけ

 別れた恋人や好意を寄せる異性の近況を、SNS等を利用して繰り返し見るだけの行為は、ネットストーカーに該当するのでしょうか。
 ネットで見るだけの行為は、ストーカー行為の【1】~【8】のどれにも該当しません。
 ですので、「ネットで見るだけ行為」はネットストーカーに該当しないと言えるでしょう。

知り合いでない人をフォロー

 知り合いでない人をフォローした場合も、ネットストーカーに当たりません。それがたとえ、やましい目的だとしても、フォロー行為自体はネットストーカーには該当しません。

SNSのダイレクトメッセージを利用したつきまとい

 フェイスブックやツイッター、インスタ等のSNSのダイレクトメッセージを利用したつきまといは、法律上、ネットストーカーには該当しない可能性があります。
 それは、ストーカー規制法で、SNSのダイレクトメッセージを利用したつきまといについての規制がないためです。

 とはいえ、ストーカー規制法では電話やFAX、電子メールを利用したつきまといは規制されています。SNSのダイレクトメッセージは、それらと同等の役割を果たしています。
 SNSのダイレクトメッセージを利用したつきまといも、ネット―ストーカー規制法で規定を設けるべきと考えられています。