会社員にとって一日の大半を過ごす場所は「会社」です。
会社は長い時間を過ごす場所だからこそ、時には人間関係に悩んだり、待遇に不満があったりすることもあることでしょう。
しかし、そのストレスを掲示板やSNS、ブログで発散させてしまうと、その会社を辞めざるを得ない事態に発展する可能性があります。
この記事では、会社の悪口をネット上に書き込んだ場合、訴えられるかもしれないボーダーラインについてお伝えします。
勤務する会社の誹謗中傷
インターネットの掲示板やSNSには、誰もが自由に書込みを行えます。そのため、日常ではあまり口にできない言葉をネット上に投稿する人が多く、個人や団体(企業)への誹謗中傷に繋がるケースがあります。
その中でも、自分が勤める会社の悪口を書き込むケースが多く見受けられます。それは、「どのような人」が「どのような理由」で行っているのでしょうか。
「どのような人」会社の悪口を書く人とは?
ネット上で会社批判をする人は、従業員であるケースが多いです。その他にも、すでに退職をしているが、以前に勤務していた会社の悪口を書き込むことがあります。
「どのような理由」なぜ、ネットに悪口を書くのか?
自分が勤務する若しくは勤務していた会社の悪口をネットに書き込む理由は、「ストレス」「妬み」「不満」など日頃、口には出さずに抱えている気持ちを発散させるケースが多いようです。
また、ネット上で他人や企業を批判することで、自分が相手よりも優位に立っていると思えることも理由とされています。
ネットで会社の悪口を書き込むとクビ!?
勤務する会社の悪口をネット上に書込み、それが会社に発覚した場合、責任を問われる事態になることが考えられます。
具体的にどのような処分が下されるのでしょうか。
懲戒解雇
「懲戒解雇」とは、社内の秩序を乱した社員に対する、会社が下す処分の中でも最も重い処分です。公務員の場合は、懲戒免職と言います。簡単に言うと「クビ」ということです。
それぞれの会社の規定によりますが、この処分を下された場合、退職金が出ない若しくは大幅に減額されます。
また、再就職先を見つける際に、履歴書の「賞罰」欄に懲戒解雇をされた旨を記載しなければなりません。
法律によって労働者は守られている部分が大きいため、企業は簡単に社員を懲戒解雇することはできません。
しかし、犯罪行為などを行った場合、懲戒解雇が適用される可能性があります。
戒告
「戒告」とは、過失や失態、非行などを強く戒めることを指します。つまり、強く注意をするということです。
この処分は、直ちに直接的な影響は少ないですが、その後の昇格や昇給などに響く可能性があります。
減給
「減給」とは、本来の給与より減額されることを言います。「減俸」と称す企業もあります。
具体的には、一定の期間、一定の割合を減額されます。例えば、「3ヶ月間、10%の減給」などです。
降格
「降格」とは、現在ある役職を解任され、階級を下げられることです。
例えば、「営業部長を解任し、課長に降格する」などです。
出勤停止
「出勤停止」とは、一定期間出勤を禁じることを言います。例えば、「1週間の出勤停止」などと命じられます。
会社によっては、出勤停止の期間、賃金が支払われないことがあります。また、その期間で会社側は、該当社員へのさらなる処分を検討し、命令を下す場合もあります。
会社の処分だけじゃない!!逮捕される可能性も
勤務する会社のみならず、ネット上に他人や企業の悪口を書き込むと逮捕や損害賠償(慰謝料)請求される場合があります。
例えば、ネット上という大勢の人が見ることのできる環境で、「○○会社の○○社長は、暴力団とかかわりがある」と書き込むと、社会的な名誉を傷つけたとして「名誉毀損罪」(刑法230条)に該当する可能性があります。
その他、いたずら心から「○○会社に爆弾を仕掛けた」と書込み、実際は行動に移さない場合でも「業務妨害罪」(刑法233、234条)で逮捕される可能性があります。
また、損害賠償(慰謝料)請求(民法709条)をされることも考えらます。
これらは、会社から下される処分に併せて処罰を受ける場合があります。
例を挙げると、会社から懲戒解雇処分を受け、併せて損害賠償請求も受ける場合があります。
上記でお伝えした他、ネット上で他人や企業に対して誹謗中傷を行うと、場合によっては他の罪に問われることがあります。
会社の悪口…許されるボーダーラインはどこ?
ここまでは、ネット上に勤務する会社の悪口を書いた場合、どのような犯罪や処分が下されるかをお伝えしました。
ですが、このような可能性があるにも関わらず、ネット上には企業を誹謗中傷する書込みは溢れているのは何故でしょうか。
その理由のひとつとして、誹謗中傷の書込みには「アウト」と「セーフ」のボーダーラインがあります。
次項で見てきましょう。
「セーフ」の場合
ネット上に勤務する会社の悪口を書いても容認される「セーフ」の場合は、どのような表記があるのでしょうか。
■プライバシー権
「プライバシー権」とは、他人からプライバシーを侵害させない権利です。例えば、「リベンジポルノ」がこれに該当します。
この権利は、個人に認められるものであって、企業には認められていません。
しかし、例えば企業情報をネット上に漏らした場合、法律違反となるケースがありますが、それはプライバシー権の侵害を問われることはありません。
■公益目的
「公益目的」とは社会にとっての利益になる目的のことです。
そして、企業は「公共性」を持つとされています。「公共性」とは、広く一般的に社会に利害や影響を持つことです。
したがって、ネット上に書き込んだ内容が、企業の実態を知らせるもので、社会に対して警鐘を鳴らすものであれば罪に問われづらいと考えられます。
しかし、罪に問われづらくても、社内での処分が危惧されともあります。
■どの企業を指しているのか特定しづらい
ネット上に会社の悪口を書き込んでも、どの企業を指しているのかわからない場合は、罪や社内の処分の対象になることはありません。
例えば、「○○自動車会社はブラック企業」などは、自動車会社であると特定できますが、どの自動車会社のことを言っているのかは、「○○」と伏せられているため判明できません。
しかし、例えば「鶴のマークの航空会社」や「アメブロの会社」など具体的な企業名を出さなくても、多くの人がその企業を特定することが可能な場合、法律や社内処分の対象になる可能性があります。
「アウト」の場合
法律や社内処分の対象になる可能性が高い「アウト」は、どのような表記があるのでしょうか。
■企業への名誉毀損
例えば、「サービス残業やパワハラが横行している。」や「カルト集団と関わりがある」など、社会的な名誉を傷つけるような書込みは名誉毀損に該当する場合があります。
さらに具体的に言うと、例文の前者は「サービス残業」や「パワハラ」は内容によっては法律に違反している可能性があり、社会的な信用を失う可能性もあります。
例文の後者は、人々の宗教の自由は憲法で認められています。しかし、「カルト教団」は悪しき集団という意味が含まれる言葉であり、反社会的な思想を持つ集団というイメージが世間に定着しています。
そのため、「カルト教団と関わりを持つ企業」とネット上で書き込まれることは、その企業の名誉を傷つけると考えられます、
■個人への名誉毀損やプライバシー侵害
前項で企業に対してのプライバシー権は認められていないとお伝えしましたが、個人へのプライバシー侵害は犯罪となる可能性があります。
例えば、「営業部の鈴木課長は不倫している」との書込みがされた場合、「不倫」は民法で離婚事由として認められている行為ため、鈴木課長に対するマイナスの影響は大きいことが予想されます。
また、前項で企業へのプライバシー侵害は認められていないとお伝えしましたが、個人へのプライバシー侵害は違法になる可能性があります。
例えば、上司や同僚の住所や電話番号、前科や病気(病歴)を勝手に書き込むとプライバシーの侵害で追及される場合があります。
■企業の業務を妨害する
企業の業務を妨害する内容をネット上に書き込むことも許されません。
例えば、「競合他社のシェアを奪うことが目的で、自社の紙面をライバル社の紙面に似せてつくり、発行した新聞社に「偽計業務妨害」の判決が下されたことがあります。
会社批判がされやすい口コミサイト
企業に対する誹謗中傷は、掲示板や口コミサイトで行われることが多いです。
掲示板では、「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)や「爆サイ」などで企業への誹謗中傷が見受けられます。
そして、口コミサイトの場合は、「転職会議」や「カイシャの評判」、「キャリコネ」などの転職口コミサイトがネット上に多く存在し、企業に対する誹謗中傷の温床とも捉えることができる状況です。
これらの口コミサイトは、給与や休日など待遇、社内の人間関係などの情報をユーザーからの口コミで集め、就職や転職後の生活を想定できるというメリットがるサイトです。
したがって、ユーザーは現在勤務している、若しくは以前に勤務していた人たちとされています。
ですが、転職口コミサイトという性格上、ユーザーは対象の企業を退職した人、または退職を考えている人というであるため、マイナスな口コミが集まってしまう傾向があります。
それが、転職口コミサイトが誹謗中傷の温床となる一因という見方ができます。
最後に
現在、ネット上は個人や企業問わず誹謗中傷する言葉が蔓延っています。
インターネットを利用する人にとって、誰もが被害者にも、加害者にもなる可能性があります。
もし、ネット上のトラブルに書き込まれた場合は、まずは冷静になり、弁護士に相談することをオススメします。
別途が普及した現代で、弁護士の中でもネットのトラブルに強い弁護士が存在するため、相談することは問題解決に向けた近道となることでしょう。