突然、発信者情報開示に係る意見照会書が届いた時の対処法

  • 2019.02.05
突然、発信者情報開示に係る意見照会書が届いた時の対処法

インターネットを利用する人であれば、誰もが当事者になる可能性がある‘ネット上の’誹謗中傷問題’。テレビのニュース番組などでもこの問題を取り上げていることがあるため、ネットを利用しない人でも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

多くのメディアは、被害者の目線でこの問題を伝えることが多いですが、加害者の視点で伝えることは少ないと言えます。

 この記事では、誹謗中傷の加害者側の立場になり、「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた場合の対処法をご紹介します。

「発信者情報開示に係る意見照会書」とは?

 「発信者情報開示に係る意見照会書」(以下、照会書)とは、例として匿名の掲示板やSNSやなどで誹謗中傷を訴えた人が、プロバイダ等(サイト管理者やネット回線会社)に発信者情報開示を求めた場合、発信者に情報の開示の有無を問う書類です。

 さらに噛み砕くと、「発信者」とはネット上に書込みを行った人物を指します。そして、「開示」とは相手が持っている情報の提示を求めることを言います。

 つまり、発信者情報の開示を受けた「プロバイダ」が、発信者本人に対して氏名、住所などの個人情報を、相手に教えても良いかと訪ねるための書類です。

 この一連の流れは、プロバイダ責任法によって定められている法的な手続きです。

プロバイダ責任法とは?

 「プロバイダ責任法」とは、ネットが普及したことで、それに伴ってトラブルも増えたことから2002年5月に制定された法律です。

 例えば、ネット上での誹謗中傷や著作権侵害などのトラブルが発生した場合、問題の情報の削除や発信者情報の提示を要求できることを定めています。

 

「発信者情報開示に係る意見照会書」が発信者に届くまでの流れ

 照会書が、発信者の手元に届くまでの前提として、誹謗中傷などの被害を訴える人が、プロバイダに「発信者情報開示請求書」を送付したというアクションがあります。

 発信者情報開示請求書とは、「被害を訴える人」が「プロバイダ」に対して、匿名で書込みを行った「発信者」の氏名や住所などの情報開示を求める書類です。

 そして、この書類を受け取ったプロバイダは、社内などで検討したうえ、発信者へ「情報を開示しても良いか?」と訪ねる書類が「発信者情報開示に係る意見照会書」となります。

【発信者情報に開示の流れ】

プロバイダとは?

 照会書の送り主は、プロバイダ責任法によると「プロバイダ等」です。ここのプロバイダは、サイト管理者とネット回線会社の両者を指しています。

 「プロバイダ」と聞くと、ネット回線会社の「インターネットプロバイダ」を指していると思う人も多いことでしょう。しかし、プロバイダ責任法では、サイト管理者も「プロバイダ」と称されています。
 因みに、サイト管理者は「コンテンツプロバイダ」とも呼ばれ、区別を図ることができます。

開示を要求されている発信者の情報

 プロバイダが、発信者に対して開示しても良いかと訪ねる内容は、以下のとおりです。

■発信者の氏名
■発信者の住所
■メールアドレス
■IPアドレス(インターネット上の住所)
■タイムスタンプ(投稿された日時)

 つまり、被害を訴えている人は、「発信者が誰なのか?」ということを知りたがっています。
 

「発信者情報開示に係る意見書」が送られてくる理由

 「自分は被害者だ!」と匿名サイトなどでの権利の侵害(※注釈)被害を訴える人が、プロバイダに「発信者情報開示請求書」を送付します。

 しかし、発信者情報開示請求書を受け取ったプロバイダは一般的に、簡単に発信者の情報を提供することはしません。
 なぜならば、プロバイダにとって「発信者」は顧客です。また、前項でお伝えしたとおり相手が知りたい情報は、発信者の「個人情報」です。

 つまり、プロバイダは顧客の個人情報を第三者に教えるには、本人(発信者)の同意を必要とするため、意見書を発信者に対して送ります。
 

【※注釈】権利の侵害とは?

 社会的な名誉、プライバシー、著作権などを権利と言い、それを他人から侵害されることを指します。

「発信者情報開示に係る意見照会書」への回答

 ここからは、照会書が発信者の手元に届いた以降についてお伝えします。

 はじめに、照会書は何の前触れもなく、発信者の元に郵送されることがほとんどです。
 そのため、突然に照会書が届いたことに驚く人も少なくないでしょう

 お伝えしてきた通り、照会書は、発信者に対して個人情報の開示の有無を尋ねています。
 では、照会書に対して発信者は、どのような回答を行えば良いのでしょうか?

回答書の用意

  照会書に対する回答は、「回答書」という書類で返送する必要があります。
 返送は、通常2週間以内に行うようにプロバイダから求められます。

 そして、回答書は決まった書式はありません。一般的に下記のフォーマットが使用されています。

回答書の書き方

 回答は、情報の開示に同意するか否かに対して、○印を付けて回答します。

 開示を拒否する場合、その理由を明記します。理由を示す上で、必要な書類がある場合は、添付資料として回答書と一緒に送付してください。

開示に「同意する場合」と「同意しない場合」それぞれのケース

 発信者が、回答書をプロバイダに返送した後はどのような展開になるのでしょうか。

 開示に同意した場合、そのまま発信者の氏名や住所などの情報が、被害を訴えている人に送られます。
 照会書を受けて、被害を訴える人の主張に納得し、同意すると、相手との和解へ向けた話し合いに発展することが予想されます。

 では、開示に同意しない場合はどのような進展が予想されるのでしょうか?
 引き続きご紹介します。

開示に同士しない場合

 照会書を受けた発信者は、情報の開示を拒否することができます。
 しかし、下記の2つの理由で強制的に情報が開示される可能性があります。

■プロバイダの判断で情報開示

 発信者が拒否したとしても、プロバイダの判断で情報が開示されるケースもあります。
 これは、発信者の書込みは、誰が見ても他人の権利を侵害するものであり、被害を訴える人の主張が正当であるとプロバイダが判断した場合、発信者の情報は自動的に開示されることになります。

■裁判所の仮処分で情報開示

 発信者が情報開示を拒否し、プロバイダも開示の拒否を支持した場合でも、最終的に情報開示となるケースがあります。
 これは、被害を訴えた人が、発信者とプロバイダの情報開示の拒否の判断を受けて、次の手段として裁判所に情報開示を求める裁判を起こした場合です。

 裁判所下す情報開示の決定は、法的な効力を持ちます。そのため、通常プロバイダは裁判所の決定に従い、発信者の情報開示を行います。

無視した場合?

 前述した通り、発信者は照会書が届いてから2周間以内に回答をしなければなりません。
 しかし、2週間が経過しても発信者からの回答が得られない場合、プロバイダの判断で情報の開示を行うケースがあります。

相手へ情報の開示!その後、どうなる?

 前項でお伝えした通り、発信者が開示を拒んでも、プロバイダや裁判所の判断で情報が開示される可能性があります。

 では、被害を訴えている相手に、発信者の情報が開示された後は、どのような事態が予想されるのでしょうか。

警察に被害届を提出される

 被害を訴えている相手が、警察などの捜査機関に被害届を提出することが考えられます。

 例えば、被害者が発信者から名誉を毀損されたと訴えている場合、「名誉毀損罪」(刑法230条)が成立する可能性があります。

 名誉毀損とは、ネット上のような大勢の人が知ることができる状況下で、「不倫している!」「犯罪歴がある!」などと言われ、社会的名誉を下げられることです。

 名誉毀損罪が成立すると、発信者は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられます。

損害賠償請求をされる

 被害を訴えている相手から、損害賠償(慰謝料)請求(民法709条)をされる場合があります。

 損害賠償請求をされても支払を拒むことができます。しかし、拒んだとしても、被害を訴えている相手が裁判を起こす可能性があます。発信者が敗訴すると、多くは裁判所から相手に損害賠償を支払うように命令が下されることになります。

弁護士に相談

 お伝えした通り、発信者のもとに照会書が届き、被害を訴えている相手に情報が開示されると、警察に被害届を出されたり、損害賠償請求をされたりと不利な状況になります。

 そして、被害を訴えている相手は、弁護士をつけている可能性が高いです。
 なぜならば、発信者を特定する手続きは、プロバイダ責任法に則った法的な手続きのため、素人が簡単にできるものではありません。

 そのため、発信者も突然、意見書が届いた時点で弁護士に相談することが最善の方法となるでしょう。
 ネットが身近なものとなった現代で、ネット上のトラブルを強みに活動している弁護士が存在します。
 そのような弁護士に相談することで、相手との和解もスムーズに進むことが予想されます。

 突然、意見書が届いたら、まずは冷静になり、弁護士に相談することが、問題解決への一番の近道と言えます。