肖像権やプライバシーの侵害…SNSに勝手に画像を掲載された場合の対処法

SNS上に旅先での思い出や、友人や恋人との写真、動画を掲載している人も多いことでしょう。
 しかし、無断で他人が写る画像を載せるとトラブルになる可能性があります。

 この記事では、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどのSNSに勝手に画像を掲載された場合のリスク、対処法をご紹介します。

「SNSに勝手に画像を載せる」とは?

 そもそも、「SNSに勝手に画像を載せる」とは、どのようなことなのでしょうか。

 例えば、友人と食事に行った際に撮影したツーショット写真を、その友人があなたに無断でSNSに掲載するということです。

 SNSが人々にとって身近な存在となっている時代で、勝手に写真を掲載されても気にならない人もいるかもしれません。
 しかし、写真をネット上に載せることは、「危険」な側面もあります。

SNSに画像を載せるリスク

 ネットに掲載した情報は、国内のみならず世界中に発信されます。
 不特定多数の人が見ることのできるネットに写真や動画を載せることは、個人情報を晒すことにつながりかねません。

 では、具体的にどのようなリスクが考えられるのでしょうか。

ストーカー被害に遭う可能性

 「ネットストーカー」とは、ネット上で特定の人物にしつこく付きまとうストーカーのことです。
 好意を抱いた人物に、執拗にSNSを利用して嫌がらせメッセージを送ったり、エスカレートすると脅迫文を送ったりする行為で相手を追い詰めるといった事例があります。

ストーカーは、元恋人や職場の同僚、毎朝同じ車輌に乗り合わせることなどがきっかけになり、実社会においての行為だと思われがちです。しかし、ネットが普及した現代では、SNSなどに掲載された、見ず知らずの人物の顔写真から好意を抱くストーカーも少なくありません。
 そして、相手の氏名や住所、職業などの情報をSNSで探り、舞台をネットから実社会に移して自宅に押し掛けたりするケースもあります。

 また、SNSに掲載された写真をもとに、GPS機能を利用して自宅や現在の居場所を突き止めるストーカーも存在します。

 実際、過去にはネット上から得た情報をもとに、相手の自宅住所を知り、殺人に至ったストーカー事件がありました。
 そのため、SNSに顔写真や自宅周辺で撮影した写真を掲載する際は、注意が必要です。

誘拐事件に巻き込まれる可能性

 とくに子供の写真をSNSに掲載した場合、誘拐事件に発展することも危惧されます。

 かわいい我が子を見てもらいたいという気持ちもありますが、GPS機能を使ったり、撮影場所が自宅周辺だったりすることで、悪意を持った人物に居場所を知られてしまう可能性があります。
 また、例えば「花子ちゃん」を「はなちゃん」など、普段呼んでいる「呼び名」を書き込むことも危険です。

 そして、現在ネット上のトラブルで被害が増加している「デジタル誘拐」。SNSに掲載されている他人の赤ちゃんの写真を、自分の子供だと偽って転載する行為が問題になっています。

 このような被害から子供を守るために注意を払わなければなりません。

アダルトサイトに無断転載される可能性

 とくに女性の場合、SNSに掲載した写真を無断でアダルトサイトに転載される危険性があります。
 具体的には、海水浴に行った際の水着姿の写真をSNSに投稿したところ、SNSに見ず知らずの男性から卑猥なメッセージが届くようになったなどの被害の実例があります。

 アダルトサイトの他にも、出会い系サイトへ転載される被害も考えられます。その場合、実際に出会い系サイトを利用していなくても、周囲からは利用していると誤解を招いてしまうことも想定されます。

「権利の侵害」の可能性

 他人の写真をSNSに勝手に掲載した場合、権利の侵害となる可能性があります。

 権利の侵害とは、憲法や法律で定められた人権を侵害する行為です。

肖像権

 「肖像権」とは、自分の容姿をみだりに写真、絵画、彫刻などにされ、これを公表されない権利を指します。この権利は、憲法13条を根拠にした人権です。

 具体的に言うと、自分の写真を勝手にSNSなどのネット上に掲載されない権利です。
 つまり、この記事のテーマである「SNSに勝手に画像を載せる」という行為は、肖像権の侵害にあたる可能性があります。

プライバシー権

 「プライバシー権」とは、自分の私生活をみだりに公開されない権利のことです。「プライバシーの侵害だ!!」という言葉は、プライバシー権の侵害を意味しています。

 具体的には、病気や病歴、年収や恋愛事情など、プライベートな部分を本人に無断で、第三者に公表することです。

 また、例を挙げると、元恋人などの性的な画像をネット上に無断で投稿する「リベンジポルノ」は、プライバシーの侵害に該当し、法律で罰せられます。

どのような罰則があるか

 「肖像権」「プライバシー権」の侵害があったと認められた場合、加害者は被害者に対して、損害賠償(慰謝料)請求をしなくてはいけない場合があります。

 過去に、プライバシー権に言及した裁判「宴のあと事件」で、裁判所は被告(訴えられた側)が、原告(訴えた側)に対して80万円の慰謝料支払を命じています。

■ 裁判の概要

「宴のあと」とは、作家の三島由紀夫氏が新潮社にて出版した小説です。その内容は、新潮社によると「都知事候補の野口雄賢と、彼を支えた女性・福沢かづの恋愛と政治の葛藤を描くことにより、一つの宴が終わったことの漠たる巨大な空白を抽象的に表現した作品。」と記されています。
 作品に登場する野口雄賢は、実際に都知事選挙に立候補した有田八郎氏をモデルにしています。

 主人公のモデルとなった有田氏は、「宴のあと」の内容は自身のプライバシーを「のぞき見」するような内容と主張。精神的苦痛を受けたとして、著者の三島氏と新潮社を提訴し、慰謝料100万円と新潮社に対して謝罪広告の掲載を求めました。

■ 判決

 東京地方裁判所は昭和39年9月28日、三島氏と新潮社に対して慰謝料80万円を命じる判決を下しました。謝罪広告の掲載は認めませんでした。

画像を削除してもらう方法

 もし、SNSに無断で画像を掲載されてしまった場合、削除を求めることが可能です。
 ですが、相手が勝手に画像を掲載したからと言っても、人間関係を気にすると言い出しづらい場合もあることでしょう。また、偶然に自分が写り込んだ写真を、全く知らない人がSNSに掲載しているケースもあります。

 以下、「誰に」削除を依頼するのかにわけて、画像を消してもらう方法をご紹介します。

友人や恋人などの場合

 友人や恋人に削除をお願いする場合、「恥ずかしいから」「ネットに顔出しはしない」「以前に顔出しをして、(ストーカーなどの)怖い思いをしたことがある」など、直接相手に理由を話してみることが必要です。

 既に、親しい中の友人や恋人であれば、きちんと理由を説明することで削除を検討してくる人のほうが多いことでしょう。

全く知らない人の場合

 自分の姿が写り込んでいる画像を、たまたまSNSで発見して困っている場合、投稿者に連絡をとり削除を依頼してみることが可能です。

 SNSは、ダイレクトメッセージの機能を使用して、投稿者と直接連絡をとることができます。
 例えば、「以前にネットストーカーの被害に遭ったことがあり…」などの理由を、丁寧に説明すれば相手も削除に応じてくれることが予想されます。

相手が削除に応じてくれない場合

 SNSに投稿された画像の削除をお願いしても、相手が応じてくれない場合もありかもしれません。
 そのような場合は、泣き寝入りとなるのでしょうか?

 いいえ、投稿者が削除してくれない時は、サイトの運営元に依頼をすれば、削除される可能性があります。

SNS運営者に連絡して削除する方法

 ツイッターやフェイスブック、インスタグラムのSNSは、それぞれの投稿に「通報する」「報告する」など運営者に連絡できるフォームがあります。

 まずは、そのフォームを利用し、削除を試みることが可能です。

弁護士に相談して削除

 この記事でもお伝えした通り、本人に無断で写真や動画をSNSに掲載することは、肖像権やプライバシー権の侵害となる恐れがあります。

 相手が削除に応じてくれず、困っている時は、弁護士に相談することも問題解決へ向けた有効的な手段です。

 現在、ネット上のトラブル解決を強みにしている弁護士がいます。多くのネット上の紛争を解決してきた豊富な経験で、肖像権やプライバシー権の侵害という法律が関わる話に発展した場合でも、強い味方担ってくれるはずです。

  ネットは、たくさんの情報を知ることができる便利なツールですが、一方でネット上のトラブルも跡を絶ちません。
 別途上のトラブルで困った際は、弁護士に相談してみましょう!