誹謗中傷の定義とは?「批判」「非難」との違いも解説

誹謗中傷の定義とは?「批判」「非難」との違いも解説

 「テラスハウスから出ていけ」「気持ち悪い、消えろ」――。見ず知らずの人から苛烈な言葉を浴びて、22歳という若さで自ら終止符を打った、テラスハウス出演者で女子プロレスラーの木村花さん。

 “みんなが言っているから”と軽い気持ちで書き込んだ言葉が積み重なって起きた悲劇。「もしかしたら、自分も悲劇を引き起こした加担者なのではないか」と自戒の念に駆られた人もいるのではないでしょうか。

 2度と同じ悲劇を起こさないよう、今、誹謗中傷に対してはセンシティブになっています。

 ただ、それに過剰に反応するあまり、ことあるごとに「それは誹謗中傷だ!」といったように、誹謗中傷の本来の意味を無視した言葉が投げられている感が否めません。

 今後は、本来の誹謗中傷を理解して、正しくインターネットを利用するべきかもしれません。
 今一度、誹謗中傷の定義について考えていきましょう

 

誹謗中傷の定義

 誹謗中傷は、「誹謗」と「中傷」の2つのワードが組み合わされた言葉です。
 「誹謗」とは、他人を悪く言う行為のことを指し、「中傷」とは、根拠のないことを述べて、他人の名誉を傷つける行為のことをいいます。

 つまり、誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言って他人の名誉を傷つける行為のことを指すと言えるでしょう。

 なお、法律では誹謗中傷についての定義はありません。

 

誹謗中傷に当たる条件

 誹謗中傷に当たる条件は、既述の通り、「①根拠のない悪口」「②他人の名誉を傷つける」の2つを満たさなければならないと考えられます。それぞれ説明させていただきます。

①根拠のない悪口

 根拠とは、もとになる理由のことをいいます。つまり、「①根拠のない悪口」とは、もとになる理由がない悪口と言えるでしょう。

 例えば「Aはバカだ」と言ったとします。その場合、バカと言える理由があれば、“根拠のある悪口”になるでしょう。 しかし、バカと言える理由がないにも関わらず、むやみに「Aはバカだ」と言った場合は、「根拠のない悪口」に当たると考えられます。

②他人の名誉を傷つける

 他人の名誉は法律で保護されています。人の名誉を傷つけると名誉棄損罪に問われる可能性があります。ですので、名誉棄損罪を紐解いていくことで、どのような行為が「他人の名誉を傷つける」に該当するのかが見えてくるでしょう。

 なお、「他人の名誉を傷つける」=「他人の社会的評価を下げる」とも言えます。

 名誉棄損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」に対して科せられます。ここでいう「人の名誉を毀損した」とは、実際に他人の社会的評価を下げるだけでなく、その可能性がある状態も含まれます。

 つまり、「②他人の名誉を傷つける」とは、他人の社会的評価を下げる、あるいはその可能性がある状態のことを指すと考えられます。

 

誹謗中傷の当たる例

 ではどのようなケースが①②の両方を満たす誹謗中傷に当たるのでしょうか。例を交えて説明していきます。

①子供の裸の画像に対して「虐待だ」と述べる

 SNSに子供の裸の画像が掲載されていたとします。それに対し、「虐待だ」と言った場合は、誹謗中傷に当たる可能性があります。
 というのも、虐待があったかどうかを、子供の裸の写真のみで判断するには根拠に乏しいためです。「①根拠のない悪口」に当たる可能性があります。

 また、「虐待だ」と言われると、社会的評価が下げられる可能性もあります。そのため、「②他人の名誉を傷つける」も該当するかもしれません。

②「○○店の料理はクソだ!」

 「○○店の料理はクソだ!」という書き込みは誹謗中傷に当たる可能性があります。
 この場合、“クソだ!”と感じる具体的な事柄を述べられていません。そのため、「①根拠のない悪口」に該当するでしょう。また、

 また、「料理がクソだ!」と書き込まれたことで、○○店は社会的信用を傷つけられるでしょう。そのため、「②他人の名誉を傷つける」も該当する可能性があります。

 

誹謗中傷の当たらない例

 対して、以下のような場合は、誹謗中傷に当たらない可能性が考えられます。

①「ウザい」

 「ウザい」の語源は、「不快だ」「気味が悪い」です。何に対して「ウザい」と述べられているのかが明確であれば「①根拠のない悪口」には当たるでしょう。しかし、「ウザい」だけでは、その理由が述べられていないため、「①根拠のない悪口」に当たる可能性があります。

 一方、「ウザい」という言葉は、「②他人の名誉を傷つける」要素としては弱いかもしれません。
 つまり、「ウザい」のみでは、誹謗中傷に当たらない可能性が考えられます

②本人が誹謗中傷されたと勘違いしている

 例えば、他人から意見されることを過剰に嫌がり、人格を否定されたり名誉を傷つけられたりしていないにも関わらず、「誹謗中傷だ」と主張している人がいるとします。
 この場合は誹謗中傷に当たらないと考えられます。

 誹謗中傷は、主観ではなく、あくまでも「①根拠のない悪口」「②他人の名誉を傷つける」の2つの観点を客観的に判断されるべきと考えられるためです。

 

誹謗中傷と批判の違い

 木村花さんの件を受けて、インターネット上の誹謗中傷をなくすために制度改正の議論が進みだしています。その一方でインターネット上では、誹謗中傷と批判の境界線についての議論が起きています。政治に批判的な声を上げるだけで「誹謗中傷だ」という主張も散見されます。

 誹謗中傷と批判の違いを示す明確な線引きはありません。ただ、双方の大きな違いは「他人の人格を尊重しているかどうか」であると考えられます。

 批判とは、他人の言動の善悪や正誤を見定め、評価・判定する際に使われる言葉です。一方、誹謗中傷は、相手をおとしめて名誉を傷つける行為です。

 例えば、学会の研究結果発表に対して、「先ほど『……』とおっしゃった部分は、先行研究との間に矛盾があるのではないかと思います」と意見を述べれば批判になるでしょう。しかし、「あなたはバカですね」と言えば誹謗中傷に当たる可能性があります。

 また、政治で例えると、「政府の今回の施策は、○○の部分に問題がある」「○○大臣の答弁は、以前言ってことと矛盾している」と言えば批判ですが、「今の政府はクズばっか」「○○大臣はバカだ」と言えば、相手の人格を否定しているので誹謗中傷に当たるかもしれません。

 また、下記のように誹謗中傷と批判を見分けることも出来ます。

①批評「コロナが怖いなら行かなきゃいいだろ」
②誹謗中傷「コロナが怖いなら行かなきゃいいだろボケ、頭悪すぎて笑う」

 ①は批判になりますが、②は人格までも否定しているので誹謗中傷に当たる可能性があります。

 

誹謗中傷と非難の違い

 非難とは、他人の欠点や過失等を取り上げて責めることをいいます。責めているのは、あくまでも欠点や過失に限定されています。誹謗中傷のように人格を否定したり、名誉を傷つたりはありません。

 

誹謗中傷と罪

 誹謗中傷は、権利侵害を起こす可能性があります。権利侵害を起こすと、名誉毀損罪侮辱罪信用棄損罪業務妨害罪等の罪に問われる可能性があります。

 

終わりに

 インターネットによって、顔を合わせずのコミュニケーションをとれるようになりました。便利である一方で、相手の立場を配慮せず、安易に高圧的な言葉を発したり、思いやりにかけた言葉を発したり等の行為が助長させています。

 便利なインターネットを、歪んだ方法で使用せず、誹謗中傷が起こらない世の中になることを願うばかりです。