誹謗中傷と批判・批評・非難・指摘・反論・反証・アンチの違いとは

誹謗中傷と批判・批評・非難・指摘・反論・反証・アンチの違いとは

「それは、誹謗中傷だ!」
「誹謗中傷じゃなくて批判だ!」

 木村花さんの自死の件以降、誹謗中傷についてセンシティブになっており、ネット上ではこのようなやりとりが散見されます。
 但し、それらの多くは、論理的ではなく感情的な主張になっています。「誹謗中傷の定義」や「誹謗中傷と批判の違い」を把握していない裏返しなのかもしれません。

 本記事では、誹謗中傷の定義に触れながら、誹謗中傷と批判・批判・批評・非難・指摘・反論・反証・アンチの違いについてお伝えしたいと思います。

 

誹謗中傷と批判・批評・非難・指摘・反論・反証・アンチの違い

 辞書で広く知られている広辞苑等で、誹謗中傷、批判、批判、批評、非難、指摘、反論、反証、アンチ、それぞれの意味を調べてみると、以下のように記載されています。なります。

■誹謗中傷
『根拠のない悪口を言って相手を傷つけること』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E8%AA%B9%E8%AC%97%E4%B8%AD%E5%82%B7』)

■批判
『①物事の真偽や善意を批評し判定すること②人物・行為・判断・学説・作品等の価値・能力・正当化・妥当性等を評価すること。哲学では、得に認識能力の吟味を意味することがある。』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E6%89%B9%E5%88%A4』)

■批評
『物事の善意・美醜(びしゅう:美しいことと醜いこと)・是非等について論ずること』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E6%89%B9%E8%A9%95』)

■非難
『欠点・過失等を責めとがめること』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E9%9D%9E%E9%9B%A3』)

■指摘
『問題となる事柄を取り出して示すこと』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E6%8C%87%E6%91%98』)

■反論
『相手の議論・非難に対して言い返すこと』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E5%8F%8D%E8%AB%96』)

■反証
『①ある主張が偽であることを証明すること②訴訟上、挙証責任のない当事者が、相手方の申し立てた事実または証拠を否定する目的で、それと両立しえない事実を証明するために提出ないしその証明活動』(『https://sakura-paris.org/dict/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91/prefix/%E5%8F%8D%E8%A8%BC』)

■アンチ
『特定の対象に対して激しく嫌悪を抱く人のこと』(『https://word-dictionary.jp/posts/1758#:~:text=%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%81%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E8%8B%B1%E5%8D%98%E8%AA%9Eanti%E3%81%8B%E3%82%89%E8%BB%A2%E3%81%98%E3%81%9F%E5%92%8C%E8%A3%BD,%E5%AF%BE%E6%8A%97%E5%8B%A2%E5%8A%9B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82』)

 辞書に記載されているそれぞれの意味を見てみると、批判・批評・非難・指摘・反論・反証・アンチにはなくて、誹謗中傷にあるものがあります。それは、「相手を傷つける」です。

 そう、「相手を傷つける」かどうかが、誹謗中傷か否かの大きなポイントと考えられるのです。

 

誹謗中傷の定義

 前出の通り、誹謗中傷は辞書には載っていますが、実は法律上の規定はありません。そのため、誹謗中傷自体を規制する法律はないのです。

 ただし、誹謗中傷によって引き起こされた権利侵害を罰する法律は定められています。その権利侵害のメインに挙げられるのが名誉毀損(他人の社会的評価を下げる行為のこと)です。

 つまり、「相手を傷つけて社会的評価を下げる」=「誹謗中傷の定義」と考えるのがベターでしょう。

【詳細記事】誹謗中傷の定義とは:法律の観点から見ると名誉毀損が大きく関わっている

 

誹謗中傷とその他の違いを表す例

 では様々なシーンを例に出しながら、誹謗中傷とその他の違いを見ていきましょう。

【例①】学会の発表作品に意見を述べるシーン

 学会の研究発表に対して、以下のように意見をするシーンがあるとします。

①「先ほど『……』とおっしゃった部分は、先行研究との間に矛盾があるのではないかと思います」
②「先ほど『……』とおっしゃった部分は、先行研究との間に矛盾があることにお気づきですか?お気づきでないなら、あなたはバカですね」

 ①は、作品に対しての妥当性を評価しているので、批判に当たるでしょう。一方、②は、前半が批判を述べていますが、後半の「あなたはバカですね。」が相手を傷つける恐れがある言葉なので、誹謗中傷になる可能性が考えらえます。

【例②】学会の発表作品に意見を述べるシーン

 政治に対し、ネットで意見を書き込みするとします。

①「政府の今回の施策は、○○の部分が問題がある」
②「○○大臣の答弁は、以前言ってことと矛盾している」と言えば批判
③「今の政府はクズばっか」
④「○○大臣はバカだ」相手の人格を否定しているので誹謗中傷に当たるかもしれません。

 ①は問題となる事柄を取り出して示しているため、指摘に当たると考えられます。
 ②は答弁の妥当性を述べているため、批判に当たるでしょう。
 ③は具体的な事柄を述べずにクズと言っているものの、特定の人物に対して述べていないので非難に該当する可能性があります。
 ④は相手の人格を否定しているので誹謗中傷になるおそれがあります。

【例③】コロナに対する考えをシーン

 続いて、コロナに対する考えを述べるシーンです。

①「コロナが怖いなら行かなきゃいいだろ」
②「コロナが怖いなら行かなきゃいいだろボケ、頭悪すぎて笑う」

 ①は物事の是非を述べているため、批評に当たると考えられます。
 一方で②は、「ボケ」「頭悪すぎて笑う」といった、相手を傷つけるような言葉も述べているため誹謗中傷に当たる恐れがあります。

 

終わりに

 ネットの発展のよって、顔を合わせずのコミュニケーションをとれるようになりました。便利である一方で、相手の立場を配慮せず、安易に高圧的な言葉を発したり、思いやりにかけた言葉を発したり等の行為が助長させています。

 ネットで意見を交わすのであれば、誹謗中傷のように相手を傷つけるのではなく有意義な情報交換が行われることが当然の世の中になることを願うばかりです。