インターネット上の誹謗中傷について、警察の寄せられた被害相談件数は、2001年に2,267件だったのに対し、2006年には8,037件と、増加傾向にあります。
一定の定義はあるものの、被害内容によって誹謗中傷に当たるかどうかはケースバイケースです。
本記事では、例えばどんなことが誹謗中傷になるのかを、例や芸能人の誹謗中傷事例を紹介しながら説明させていただきます。
誹謗中傷とは
誹謗中傷は、「誹謗」と「中傷」の2語を組み合わせて表現された言葉です。「誹謗」とは、他人を悪く言うことを指します。対して「中傷」とは、根拠のないことを言いふらして、他人を傷つける行為のことをいいます。
つまり、誹謗中傷とは、根拠のない悪口を言いふらして、他人を傷つける行為のことをいうのです。
近年、誹謗中傷はインターネット上でも横行しており、先日ワイドショー等で大きく取り上げられた、プロレスラーの木村花さんもその被害者の一人です。
どこからが誹謗中傷になる?
他人を悪く言って傷つけるのが誹謗中傷なら、「批判も誹謗中傷になるのか」等、どこからが誹謗中傷に当たるか曖昧に感じるのではないでしょうか。
実は、誹謗中傷は、人の権利を侵害するかどうかが基準になっていると考えられます。
誹謗中傷で侵害される可能性がある権利は、「個人として尊重されるべき人格権(日本国憲法第13条)」です。
誹謗中傷の例
ではインターネット上で、どのような書き込みをすると「個人として尊重されるべき人格権」が侵害されるのでしょうか。
誹謗中傷が多く行われるツイッター(SNS)と掲示板を例に見ていきましょう。
【例①】ツイッター(SNS)での誹謗中傷
ツイッターの個人アカウントに対し、以下のようなリプライ(返信)やDM(ダイレクトメッセージ)をする行為は誹謗中傷になる可能性があります。
「ガソリンをまいて火をつけてやる」
→「個人として尊重されるべき人格権」を侵害する脅迫罪に該当する可能性があります。
「お前が経営している店はゴキブリがいっぱいいて汚い」
→「個人として尊重されるべき人格権」を侵害する信用毀損罪に該当する可能性があります。
【例②】掲示板での誹謗中傷
1:名無し:2020/××/×× ○○学校 3年〇組 |
上記のような書き込みは、「個人として尊重されるべき人格権」を侵害する名誉毀損罪に該当する可能性があります。
誹謗中傷は、上記の例①②で紹介した脅迫罪、信用毀損罪、名誉棄損罪の他に、プライバシーの侵害、侮辱罪、業務妨害罪に問われる可能性もあります。
芸能人の誹謗中の事例
ここからは、実際に起きた芸能人の誹謗中傷の事例をご紹介します。誹謗中傷をした本人は、書類送検されています。
川崎希:女性2人が侮辱罪で書類送検
元AKB48のメンバーでタレント・実業家の川崎希さんは、2019年10月に数年に渡り、ネットの匿名掲示板等で、自身や家族に対する悪質な嫌がらせを受けていることを告白しています。
「匿名の掲示板でみんなで自宅に着払いで荷物を送ろうと呼びかけられたり、海外にいる間は放火するチャンスと言われたりしてこわい思いもたくさんありました」と、恐怖を感じていたことを告白しました。
川崎さんは、弁護士に依頼して裁判所を通じ、誹謗中傷の書き込みについて発信者情報開示請求を行い、投稿者の名前と住所を特定しました。犯人の女性2人は侮辱罪で書類送検されたのです。
堀ちえみ:主婦が脅迫容疑で書類送検
がん闘病中のタレント・堀ちえみさんは、2019年2月、舌がんの手術を受けた前日に、自身のブログのコメント欄に「死ね消えろ馬鹿みたい」と書き込まれました。さらに、食堂がんの手術を受けた同年4月以降は、「ガンなのに、あちこちで叩かれて笑えるわ。次はどんな病気?(笑)」「死ねばよかったのに」等と、数か月に渡った誹謗中傷のコメントが投稿されました。
これを受け、堀さんは警視庁に被害届を提出します。同年6月、誹謗中傷のコメントを書き込んだ北海道在住の50代主婦が脅迫容疑で書類送検されたのです。
西田敏行:男女3人が偽計業務妨害罪容疑で書類送検
俳優の西田敏行さんは、一般人が運営している、まとめサイトに「西田敏行が違法薬物を使用している」「女性に対し日常的に暴力をふるっている」等と、事実無根で悪質な情報を書き込まれる被害を浴び続けていました。それを受けて、2016年8月に西田さんの所属事務所は警察に被害届を提出します。
翌2017年7月、警察は偽計業務妨害罪容疑で、中部地方に住む40~60代の男女3人を書類送検をしました。
終わりに
どのようなことをすると誹謗中傷に当たるのか、お分かりいただけたでしょうか。「個人として尊重されるべき人格権」を侵害すると、誹謗中傷に当たる可能性が生じます。今回紹介したように名誉棄損罪等の容疑で書類送検されるケースも少なくありません。
また、こちらの記事「ネットで誹謗中傷する人の心理・特徴:加害者が経験する最悪シナリオとは」では、ほんの出来心で書き込んだ行為が最悪の末路を迎えるケースを紹介しています。
いずれにせよ、インターネットで情報発信する方は、無自覚で誹謗中傷をしないように、気をつけて情報を発信することに留意した方がよいでしょう。