ネットで誹謗中傷されたら…犯人を特定する開示請求の方法

  • 2018.01.22
ネットで誹謗中傷されたら…犯人を特定する開示請求の方法

もしも、ネット上で誹謗中傷されたらどうする?

ある日突然、自分の悪口がツイッターなどのSNSや2ちゃんねるなどの掲示板に書き込まれ、誹謗中傷する書き込みがされたら…。

「ネットでの誹謗中傷なんて自分には関係ない!」と思う人も多いことでしょう。しかし、近年ネット上には個人や法人への悪口を書き込み、それがSNS等で拡散して事件へ繋がるケースが多発しています。

ネット上に掲載された書き込みは、削除されない限り永遠と残ることになります。もし、そのような被害にあったら、どのような行動をとればいいのでしょうか。

誹謗中傷ってなに?

 誹謗中傷とは、他人の徹底的に他人の悪口を言い、非難することです。

憲法21条で「1集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。2検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」と定められています。

 これは、日本における表現、言論の自由を保障する根拠となる法令です。人々には表現の自由があります。しかし、人を傷つけるようなことを言っていいわけではありません。他人を誹謗中傷する言動すれば刑事罰を受ける場合もあり、民法第709条の不法行為によって損害賠償を請求させる可能性もあります。
 どのような刑事罰に触れる可能性があるのがご紹介します。

■「名誉毀損罪」(刑法230条)

「名誉毀損」(めいよきそん)とは、内容の真意にかかわらず、不特定多数の人が知ることが出来る状況下で、他人に対する社会的評価(名誉)を下げるような言動を行うと名誉毀損罪に問われる可能性があります。

  相手が個人か、法人かは関係がなく、その情報が本当か、嘘かも問われません。不特定多数といっても、例えばインターネット上で少数の人に対して行った言動が、「#拡散希望」などで大勢の人へ広まった場合も公然とみなされ不特定多数の人へ広めたことになる場合もあります。

 刑法で「3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処する。」と定められており、裁判で有罪となると懲役刑が下される可能性もある重い罪です。

■「侮辱罪」(刑法231条)

 「侮辱」(ぶじょく)とは相手を軽視してはずかしめたり、名誉を傷つけることを指します。
 具体的なことを挙げずに抽象的な表現で相手の社会的評価を傷つけると、侮辱罪に該当する場合があり、拘留または科料に処される可能性があります。

■「脅迫罪」(刑法222条)

 「脅迫」(きょうはく)とは、相手を脅し、恐怖を与えることです。例えば、「お前を殺すぞ」と一言口にしただけで罪に脅迫罪に該当します。これは本人のみならず、親族への告知も含まれます(第2項)。

 「生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加える旨を告知」(第1項)と条文には記載されています。これを一つひとつ例に上げると下記になります。
 生命…「お前を殺すぞ!」「娘を殺すぞ!」
 身体…「殴るぞ!」
 自由…「娘を誘拐するぞ!」「閉じ込めてやる!」
 名誉…「世間に公表するぞ!」
 財産…「家に火をつけるぞ!」「ペットを殺すぞ!」
 
 脅迫罪は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています。

■「プライバシー権」

 「プライバシー権」とは、私生活上のことがらをみだりに公開されない権利とされています。つまり、プライバシーの侵害をさせない権利です。
 名誉毀損罪、侮辱罪が他人からの評価であることに対して、プライバシー権は「自分の情報の権利」ということになります。
 例えば、リベンジポルノのように自分の性的な部分を写真などで公開されることはプライバシー権に該当します。

 

 「本音と建前」という日本人を表す言葉があります。相手と対面している時は、本音を隠して発言や行動をする…。匿名性の高いインターネットは、そんな日本人の押さえつけられた感情を表に引き出す救世主になったとも考えられます。

 SNSやブログ、掲示板などは本名を出さずに利用することができます。「誰が書いているのか、匿名だからわからないはず…」という考えから、他人を誹謗中傷するような言葉がネット上に溢れているのかもしれません。

ネット書き込み

ネット上の誹謗中傷で事件化したケース

 ネット上で他人の誹謗中傷をしたとして逮捕された事例もあります。テレビ番組などのメディアでも取り上げられた事例を一部ご紹介します。

スマイリーキクチ中傷被害事件

 いわれない誹謗中傷やデマに10年間、苦しめられた芸能人がいます。
 お笑いタレントのスマイリーキクチさんは、1988年から89年にかけて東京都足立区で発生した女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人だというデマが、匿名で書き込めるネット掲示板「2ちゃんねる」に投稿され、それを信じたネットユーザーからの誹謗中傷に悩まされました。

 キクチさんへの誹謗中傷がはじまったのは1999年頃だったそうです。デマの根拠となった理由は、既に逮捕されていた犯人と同年代で、事件現場となった足立区出身だという安易なものでした。
 このような共通点を持つ人は多く存在することでしょう。当時キクチさんは多くのバラエテイ番組になどに出演する有名人であったゆえにネットユーザーによってデマが拡散されたようです。

 誹謗中傷は掲示板だけではなく、キクチさんのオフィシャルブログにも広がり、殺害予告など脅迫する内容も書き込まれるようになりました。さらには所属事務所、CM契約を結んでいたスポンサー企業へ、「犯罪者をテレビに出すな」などの苦情の電話が入るようになり、仕事へも大きな影響を及ぼすようになったといいます。

 この事態を受けてキクチさんは、警察に相談へ行きます。しかし、当時はネット上でのトラブルが世間に認知されていなかったこともあり、相手にされなかったと振り返っています。

 警察が動いたのは2009年のことでした。全国各地に住む19名の男女が、キクチさんへの名誉毀損、脅迫罪で検挙されました。
 複数の加害者が、1人に対して誹謗中傷をして一斉摘発された日本で初めての事件となり、被害者が芸能人であることからも当時は大きな話題を集めました。
 このようにネット上での誹謗中傷がエスカレートすると、殺害予告などの脅迫へとつながるケースもあります。

あなたが誹謗中傷されたらどうする?

 あなたがネット上での誹謗中傷のターゲットになってしまった場合、まずは冷静になることが重要です。
 SNSやブログ、掲示板などに自分の名前、住所など個人情報が書き込まれ、デマや誹謗中傷する書込みがされた場合、それを削除することができます。

 まず、基本的には運営側に連絡して削除をしてもらう方法があります。近年ではSNSやブログ、掲示板では、個人や法人を誹謗中傷する書込みを禁止とするルールを設けている場合がほとんどです。
多くのサイトでは、一番下に運営側の情報(会社概要)、お問い合わせ欄などがあり、直接連絡をとることが可能です。

・氏名
・連絡先(メールアドレスなど)
・削除したい投稿
・削除したい理由

少なくとも上記を添えて、サイトの運営側へ連絡をしましょう。削除したい投稿について、明確に内容を示すことが大切です。例えば、URLのみだけでは投稿のどの部分を指摘しているのかわかりづらいため、不適切な内容を具体的に示さなければなりません。

それでも削除できなかったら?

 運営者に削除依頼をしても実行されなかった場合、もしくは削除依頼の連絡先がわからないサイトは、「開示請求」をして誹謗中傷やデマの情報を投稿した人物のIPアドレスを入手することができます。
IPアドレスとは、投稿した人物が使用するネット回線がわかるもので、ネット上の住所といわれることもあります。
 
開示請求の流れとして、まずは誹謗中傷やデマの書込みをした人物のIPアドレスの提示をコンテンツプロバイダー(運営側)に求めます。その情報をインターネットサービスプロバイダ(ネット回線の提供会社)に照会して、投稿した人物を探し出すことが可能です。
インターネット利用者は、いずれかのインターネットサービスプロバイダと契約し、料金を支払っているため、企業側は利用者の氏名、住所、連絡先を把握しています。
この手続きは、誹謗中傷やデマの被害にあった本人が弁護士に依頼して行うことが一般的です。

開示請求の具体例

発信者情報開示請求の手続きの流れ
例えば、ヤフー知恵袋で個人や法人を誹謗中傷する書込みがされたと仮定します。問題の書込みを見つけたら、「違反報告」でコンテンツプロバイ(サイト運営側のヤフー)へ連絡を入れ、投稿の削除を依頼します。
その内容が悪質な場合は、匿名であっても投稿者を特定することが可能です。

まず、コンテンツプロバイダに「発信者情報開示請求書」を送ります。これを受けたコンテンツプロバイダは、投稿者のIPアドレス、タイムスタンプなどを提示します。しかし、情報の開示を拒んだ場合は、裁判所の簡易的な裁判により仮処分を下してもらう必要があります。

次に、IPアドレスをもとにインターネットプロバイダを探し、利用者の氏名、住所、連絡先などの個人情報の開示を要求します。しかし、インターネットプロバイダにとっては顧客の個人情報を提供することになるため、「発信者情報開示請求訴訟」の裁判を起こし、裁判所から情報開示の命令を下してもらう必要が出てくる可能性が高いです。

また、インターネットプロバイダへ事前に、アクセスログ(パソコンへのアクセス記録)の保存を求めておきます。アクセスログの保存期間は通常3から6ヶ月とされているため、期限が切れてしまうと消去され、IPアドレスとの照会ができなくなる可能性があります。

開示請求で問題の書込みをした人物を特定するには、場合によっては3回ほどの裁判を起こす必要があるため、労力と時間を費やすことになります。
悪質な内容により社会的評価を下げられたり、精神的苦痛を受けた場合は、弁護士に相談して損害賠償請求を行うことも考えられます。

証拠保存

 また、開示請求を行う上で、デマや誹謗中傷の書込みがあった事実の証拠を保存しておくことが重要です。
 開示請求を行う前に、問題のある書込みが削除されてしまった場合、情報の開示が認められなくなります。

 証拠保存のポイントは、基本的に以下の2つが必要となります。
 ・問題のサイトのURLが明確にわかるようにする
 ・問題の書込み内容がきちんと記載されている

 証拠保存の方法として、以下の4つが挙げられます。
 ・スクリーンショット(キャプチャ)を撮る
 ・紙に印刷する
 ・PDFで出力する
 ・パソコン画面をカメラで撮影する

問題のある書込みを発見したら…

ネット上でのデマや誹謗中傷は、名誉毀損罪や侮辱罪の刑事罰に問われる場合があります。さらには脅迫罪へエスカレートするケースもあり、大きな事件へと発展する事例もご紹介しました。

問題のある書込みを見つけたら、素早く対応することが大切です。また、自分自身へのデマや誹謗中傷の書込みを、本人が削除依頼などの対応をすることも可能ですが、冷静に迅速に問題の収束をするためにも、インターネットの事案に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。