「誹謗中傷してしまった顛末…加害者が経験する最悪のシナリオとは?」

  • 2018.06.18
「誹謗中傷してしまった顛末…加害者が経験する最悪のシナリオとは?」

インターネット上の誹謗中傷が問題視され、被害は年々拡大傾向にあります。いわれなき誹謗中傷に苦しむ人がいる一方で、ほんの出来心で加害者になってしまった人も存在します。

この記事では、誰にでも可能性がある「誹謗中傷の犯人」になってしまった場合の対処法をご紹介します。

そもそも誹謗中傷とは?

ネット上のトラブルとして多い「誹謗中傷」。そもそも誹謗中傷とは、根拠のない悪口を徹底的 に言い、他人の社会的名誉を傷つける言動を指します。

例えば、ネット上に書かれる誹謗中傷は、以下のようなものがあります。

■「○○さんは、社内で不倫している」

■「○○さんは、前勤務していた会社で横領していた」

■「○○会社は従業員に給料を支払ってない」

このような言葉がSNSや掲示板、口コミサイトなどで後を絶ちません。
実際は社内不倫の事実はないのに、ネット上に根も葉もない噂を立てられ、会社に居づらくなることも考えられます。

誹謗中傷の被害に苦しむ人がいるということは、その一方で必ず加害者が存在します。
加害者は、どのような心理状況でネット上に他人を傷つける言葉を書き込むのでしょうか。

誹謗中傷する心理

幼い頃、誰もが一度は「いじめは絶対にいけません!」「人の悪口を言ってはいけません!」などと両親や学校の先生に言われたことがあることでしょう。

しかし、大人になってもいじめや人の悪口を繰り返す人はたくさんいます。その舞台が実社会ではなくネット上になると、さらに悪質な言動になる傾向があります。

なぜ、ネット上でいじめや悪口がエスカレートしやすいのでしょか。以下の心理が考えられます。

匿名で書き込める

誹謗中傷の舞台となりやすいのは、「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)」や「ツイッター」など匿名で書込みができるサイトです。

これらのサイトは、本名を名乗らなくても利用できるため、「身元がバレなきゃ何を書いてもいい」という考えから他人の悪口を書込み、ストレス発散の場となっている可能性があります。

実社会では思い通りに行かないことも多く、理不尽な思いを抱えている人も多くいます。それが、匿名性が高いネットの世界であれば、普段の憂さ晴らしがしやすいと考えるひとが多いようです。

嫉妬

自分が持っていないものを、相手が持っている場合 、妬みで誹謗中傷の言葉を書き込むことがあります。
そのような人は、自分へのコンプレックスが大きいとも考えることができます。

例えば、自分はアルバイトで経済的に苦しい生活を送っているのに、相手がお金持ちの生活を送っていれば、その環境を妬んでネット上に悪口を書いてしまうことが考えられます。

自分が他人よりも優位に立つ

人間は心のどこかで、人間関係の中で順番を付けたがる心理が働きます。

例えば、「あの子よりも、私のほうが可愛い!」「あいつよりも、俺のほうが仕事ができる!」など普段の生活の中で、他人よりも自分が優位に立つことで安心や快感を覚える人がいます。

このような心理が働く人は、日頃の苛立ちや不満などが、心のどこかにあって、それを払拭するために、他人よりも自分が偉いと思うことで‘幼稚な満足感’を得ていると言われています。

匿名掲示板のストレス発散の場

「本音と建前」という日本人の性格の特徴を表す言葉があります。感情と態度が違うことを示す言葉ですが、ネット上の匿名掲示板は、本音と建前を使い分ける日本人のストレス発散の場になっているとも言える現状です。

日頃のストレスを解消させることは大切なことですが、他人を傷つけるようなやり方は、決して良い方法ではありません。

しかし、匿名掲示板を利用する人の中には、ダメだと頭でわかっていても、ついつい他人を揶揄するような言葉を書き込んでしまった経験を持つ人は多いのではないでしょうか。

この先は、誹謗中傷してしまった加害者には、どのような状況が待ち受けるのかを想定したお話が続きます。

誹謗中傷したら、どうなる?

もしも、ほんの出来心で他人を誹謗中傷する書込みをしてしまった場合、どのような結果が考えられるでしょうか?

今回は、最悪なシナリオで誹謗中傷した加害者の顛末をご紹介します。

魔が差しただけ…誹謗中傷してしまったA子さんの場合

休日のA子さんは、時間を持て余していたため、自宅のパソコンで掲示板の5ちゃんねるを見て楽しんでいました。

サイトを見ていると、自身が勤務している会社のスレッドを発見し、読んでみると社内の内情が面白おかしく書き込まれていました。

もともと、残業代が正確に支払われていないことに不満を抱いていたA子さんは、「○○会社は、月に50時間残業しても残業代なし!」「社長はドケチのハゲ野郎!」「こんな会社働く価値なし!」など会社や社長の悪口を書き込んでしまいました。

突然の内容証明で、多額の慰謝料請求

会社の悪口を書き込んだ後もA子さんは、時々その掲示板をのぞくように…。すると、自分の書込みが削除されていることに気づきました。
ですが、A子さんは特に気にすることもなく、さらに月日は流れ、削除されたことで書込みをしたことも忘れていていきました。

そして、ある日突然、契約しているネット回線会社(インターネットプロバイダー)から「発信者情報開示請求の可否について」という書類がA子さんのもとに届きました。
その書類は、掲示板に書込みをしたのは、A子さんの自宅(住所)であることを、書込みをした会社側(A子さんの勤務先)に教えても良いかという内容でした。

突然、書類が届いたことで、驚いたA子さんは、住所など個人情報を提供することを拒否してしまいました。
しかし、その後も相手は個人情報を求めて、裁判に発展…。
裁判の結果、ネット回線会社が負けたため、A子さんのもとに慰謝料500万円を支払え」という内容証明書が届きました。

書込みが会社にバレて、退職…

裁判を起こされ、悪口をネットに書き込んだことが勤務する会社に知られてしまったA子さん。会社に居づらくなり、退職することになってしまいました。

会社を辞めたA子さんに残ったのは500万円の請求書。どうして良いかわからず、無料で相談できる弁護士をネットで探し、訴えられたことの話の流れを説明しました。

弁護士のアドバイスがありA子さんは、会社とは示談で済むことに。しかし、現在も月々数万円ずつを相手に支払う生活が続いています。

ネット上に匿名は存在しない!「開示請求」で身元がバレる…

前項では、つい魔が差してしまい、匿名掲示板に自分が勤務する会社の悪口を書き込んでしまったA子さんのケースをお話しました。

このお話の中で、A子さんのもとに突然、ネット回線会社から「発信者情報開示請求の可否について」と題された書類が届いています。
匿名の掲示板に書き込んだはずなのに、なぜA子さんの住所に書類が届いたのでしょうか。

その答えは、「開示請求」という法的な手続きをとったからと言えます。

開示請求とは?

開示請求とは、相手が持っている情報を提示させる手続きです。
今回のようなネット上の誹謗中傷トラブルについて開示請求する目的は、問題の書込みをした人物(犯人)を探し出す手段として行います。

開示請求の具体的な方法

前述したケースの場合、悪口を書かれた会社は、どのようにしてA子さんを突き止めたのでしょうか。以下のような手法が考えられます。

まず、会社はコンテンツプロバイダ(サイト運営者の5ちゃんねる)に問題の書込みをした投稿者のIPアドレス(インターネット上の住所)、タイムスタンプ(書込みがされた日時)などの情報を提示させます。

次に、インターネットプロバイダ(ネット回線会社:docomoなど)にIPアドレスとタイムスタンプを照会してA子さんの住所に「発信者情報開示請求の可否について」と題した書類を送ったと予想されます。

ネットを利用する人は必ず、インターネットプロバイダと契約し、使用料金を支払っています。A子さんもインターネットプロバイダと契約を結び、ネットを自宅で利用していました。契約の際、氏名、住所、電話番号など個人情報を提供していることで、会社側は、A子さんに書類を送ることが可能だったと考えられます。

ここまでは、A子さんのケースでお話してきましたが、悪質な誹謗中傷を繰り返した場合、警察に逮捕される場合があることを次項でお伝えします。

誹謗中傷で問われる罪

ネット上に誹謗中傷の書込みをすると、場合によっては警察に逮捕されるケースもあります。
誹謗中傷された被害者が、警察に相談に行き、捜査によって逮捕できると判断されると、加害者は刑事罰を受ける可能性があります。
そのような場合、具体的にどのような罪に問われるのでしょうか?

名誉毀損罪

「名誉毀損」とは、他人の社会的評価を下げる言動を言います。内容が本当か嘘か、相手が個人か企業などの団体かは問われません。

不特定多数の人が知り得る状況下で、他人の品性や能力を社会的に下げるような言動は、刑法230条で定める「名誉毀損罪」に問われる可能性があります。
3年以下の懲役50万円以下の罰金と定められています。

侮辱罪

「侮辱」とは、相手を軽視して、抽象的な言葉で名誉を下げる言動を指します。
例えば、「バカ」「アホ」「カス」「クズ」「ブス」など具体的には言わずに、漠然とした表現で相手の社会的評価を下げると、刑法231条で定める「侮辱罪」にあたる場合があります。
罪に問われると、拘留 または科料 に処される可能性があります。

脅迫罪

「脅迫」(きょうはく)とは、相手を脅し、恐怖を与える行為です。
例えば、「お前を殺すぞ」と相手の命を脅かす言葉を、一言口だけでも発しただけで脅迫罪に該当します。これは本人のみならず、親族への告知も含まれます(第2項) 。

「生命、身体、自由、名誉または財産に対して害を加える旨を告知」(第1項)と条文には記載されています。これを一つひとつ例に上げると下記になります。
生命…「お前を殺すぞ!」「娘を殺すぞ!」
身体…「殴るぞ!」
自由…「娘を誘拐するぞ!」「閉じ込めてやる!」
名誉…「世間に公表するぞ!」
財産…「家に火をつけるぞ!」「ペットを殺すぞ!」

脅迫罪は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています。

業務妨害罪

業務妨害罪とは、①偽計業務妨害罪と②威力業務妨害罪の2つに大きく分かれます。

①偽計業務妨害罪とは、ウソの噂話しを流して人を欺き、業務を妨害することです。なお、この方法で人の社会的信用を損なわせることも同罪となります。

この罪は、範囲が広く故意に行った行為が仕事中の人に迷惑をかけた 場合、それが悪質と判断されると犯罪が成立します。

事例として、旅行会社に勤務する社員の男性が、高校の遠足バスを手配することを忘れたことで、生徒を装って自殺をほのめかす手紙を学校に送りつけ、遠足を中止させようとした事件がありました。これは、バスの手配を忘れたミスを隠すためにした行為で、旅行会社社員は偽計業務妨害罪で逮捕されました。

このように、「バスに爆弾をしかけたぞ!」などの直接的な脅迫ではなく、「自殺をほのめかす」という遠回りの方法で学校の業務を妨げたことも罪に問われることになりました。

②威力業務妨害とは、相手を圧倒的な力で押さえつけるような方法を用いて、業務を妨害することです。
例えば、「市役所に爆弾をしかけたぞ!」と脅し、市役所の業務を妨げる行為などです。

過去にはこのような事例もあります。スーパーマーケットにゴキブリ数十匹をばら撒いたとして、女性が威力業務妨害で逮捕されました。
この行為は、ゴキブリを巻き散らかすという直接的で有効的な方法で、スーパーの業務を妨げたため、犯罪が成立しました。

偽計業務妨害、威力業務妨害の法定刑は、3年以下の懲役50万円以下の罰金です。

上記でお伝えした中には、警察に逮捕され、裁判で有罪になれば懲役刑が下される刑もあります。
ほんの出来心で…と、ネットに書き込んでしまったことが、人生を大きく狂わす結果になるかもしれません。
A子さんの場合は、仮定したお話でしたが、実際に誹謗中傷で訴えられた一般の女性も存在することを後述します。

誹謗中傷されても、有名人は立場が弱い!?

ネット上の誹謗中傷に遭いやすい人として、芸能人やスポーツ選手などの有名人が、やはり被害に遭いやすいといえます。
世間の表舞台に立つことが多い人ほど、人の目に触れることが多いため、さまざまな感情を持たれて誹謗中傷のターゲットになりやすいことが考えられます。

お伝えした通り、誹謗中傷の内容は悪質な場合は、名誉毀損罪などで逮捕されたり、相手から損害賠償請求をされたりする可能性もあります。
民間企業や民間人(一般人)が誹謗中傷を受けて、相手を訴え裁判に発展したケースは、近年増えてきていますが、有名人が民間企業や民間人を訴えることは、イメージダウンに繋がるなどが理由でハードルが高いとされています。

しかし、ネットの匿名掲示板で誹謗中傷されたとして、プロ野球・横浜DeNAベイスターズの井納翔一投手が、一般女性を訴えた事例があります。

プロ野球選手が、一般人を訴えたケース

井納選手の夫人に対し、「嫁がブス」とネット上の匿名掲示板で誹謗中傷したとして、20代の一般女性が訴えられことが、2018年1月に一部週刊誌で伝えられました。

ほんの出来心で書いてしまったという加害者の女性。突然「発信者情報開示請求」の書類が送付されてきて、約200万円の慰謝料を請求され途方にくれているという内容で報道されました。

異例のケース

プロ野球選手が、一般人を訴えたことは異例とも言えるケースです。前述した通り、人気商売の有名人が一般人を訴えることは、イメージダウンというリスクが伴うからです。スポーツ選手は、実力主義とも言えますが、やはり人気を得ることも重要な職業という側面も併せ持っています。

有名人が井納を擁護

井納選手が一般人を訴えたニュースは、同じスポーツ選手や芸能人から反響があり、それぞれの考えをツイッターに載せています。

米国・メジャーリーグで活躍するダルビッシュ有投手は、井納選手が一般人を訴えたことを取り上げたテレビ番組の記事を添えて、「本当悪口ばっかり書いているアカウントの人いるけど気をつけた方がいいですよー!」と警告を鳴らしています。

お笑いタレントのスマイリーキクチさんは、「報道されてないだけで、ネットによる人権侵害や訴訟件数は年々増えている。匿名だから身元はバレない、悪口や中傷も言論の自由の範囲内だと勘違いしている者が普通にいる。やられた側は本来必要としない費用と時間とストレスを感じた上に全面的に損をする現状を打破したい。」とコメントしています。

以前にキクチさんは、ネット上で凶悪殺人事件の犯人とデマを流され、いわれなき誹謗中傷に苦しんだ過去があります。

今回、井納選手がいわれなき誹謗中傷に苦しみ、一般人であっても訴えた事例は、今後「ネットで誹謗中傷したら訴えられるかもしれない…」という認識が世間に浸透するきっかけとなるかもしれません。

ちょっと待って!逮捕される

お伝えしたとおり、ネット上に他人を誹謗中傷する書込みをした場合、警察に逮捕される、若しくは相手から損害賠償請求をされる場合があります。

警察に逮捕された場合は前科がつく可能性があり、それは一生消えないものとなります。また、損害賠償請求されると数百万円の金額を要求されることも考えられます。このような事態になると、大きな負担となり、その先の人生も変わってしまう恐れがあります。

もし、誹謗中傷の加害者となってしまった場合、どのような行動をとれば負担を軽くした解決ができるのでしょうか。

訴えられたら示談へ

ほんの出来心で他人を誹謗中傷してしまい、相手から訴えられた場合、被害者と示談交渉することによって逮捕や損害賠償請求の裁判を避ける可能性があります。

示談とは、話し合うことです。トラブルが発生した場合、当事者同士が話し合って損害賠償(示談金)の金額や支払い方法などを決めます。

被害者が、誹謗中傷されたことを警察に相談し、逮捕に向けて捜査していたとしても、被害者と加害者が示談交渉に入った段階で逮捕を待ってくれる可能性があります。

そして、被害者側との示談が成功すれば、警察に逮捕されることは避けられると考えられます。相手側に、示談で合意した慰謝料を支払えば、加害者に前科が付くことはありません。

もしも、誹謗中傷してしまい、訴えられた場合は、早急にネット上のトラブルに強い弁護士に相談し、被害者側と示談ができるように行動することが、問題解決への一番の近道と言えるでしょう。