企業のコンプライアンス!従業員のSNSが炎上しないための対策3つ

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のユーザーは年々増加しています。若者のみならず、幅広年代で利用されています。
 ネット上で友人や家族とつながることができ、個人が自由に情報を発信できるツールとして普及していますが、一方で不適切や行き過ぎた行動で炎上している投稿もあります。

 この記事では、企業に勤務する従業員のSNSが批判された場合、企業の責任についてお伝えします。

従業員のSNS対策をしていますか?

 総務省によると2016年時点で、SNS(Twitter、Facebook、LINE、mixi、mobage、GREEの利用者は、国民の71.2%と発表しています。

出典元:http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111130.html

多くの人が利用するSNSですが、不適切な発言、写真や動画を掲載し、炎上することが話題になることがあります。その中には、企業のアカウントが炎上することもあります。

 「うちの会社は公式アカウント持っていないから関係ない!」なんていう油断は禁物です。従業員のSNSが炎上したことで、勤務先の企業が責任を問われるケースがあります。

従業員のSNS炎上は、企業も責任を問われる!?

 従業員が、個人のSNSアカウントで不適切な投稿などで炎上した場合、会社は無関係ではいられない可能性があります。

 過去には、ホテルの従業員が芸能人の宿泊をTwitterに投稿し、さらにはその芸能人がチェックアウトした直後の部屋とされる写真を投稿して炎上になったケースがあります。

 このような内容を自分のTwitterに投稿したホテル従業員への「守秘義務」(注釈1)の責任も問われますが、同様に雇用しているホテル責任を追求されると考えられます。

(注釈1)守秘義務

 「守秘義務」とは、職業に従事する、従事した人が、業務で知り得た情報を口外してはならないことを指しています。例えば、業務で知り得た芸能人の個人情報を友人に話すと守秘義務違反に該当します。

使用者責任(民法715条)

 「使用者責任」とは、従業員が第三者に損害を与えた場合、雇用する会社にも責任があるという意味です。

 例えば、従業員Aが業務中に運転していたところ、横断歩道を歩行していたBをはねてしまいました。AがBに対して責任を追うことはもちろんですが、業務中の行為のためAを雇用する企業・Cの責任も問われます。

SNSについて、企業が従業員にやるべき3つ

 従業員が持つSNSの炎上を防ぐための対策として、企業がやるべきこと3つをご紹介します。

①ガイドラインの作成

 SNSを利用する際の企業方針を定めたほうがよいでしょう。
 ルールを明確に示すことによって、従業員は「投稿しても良い内容」「投稿したらダメな内容」の判断がつきやすくなります。

 ガイドラインに記載したほうが良い項目を、以下提示します。

① 機密情報の保護

 →自社の経営状況や営業戦略など会社の利益に関わるような秘密事項は絶対にSNSで発信してはいけません。

② 顧客や取引先の情報の保護

 →顧客や取引の個人情報をSNSで発信してはいけません。個人情報保護法に違反する可能性もあります。

③ 誹謗中傷の禁止 

 →上司や同僚、取引先の悪口をSNSに投稿することは信用を失いかねません。また、外国人や性別の差別的発言も同様に投稿してはいけません。

④ 自社に関する情報の発信

 →新商品やサービスの情報をSNSで発信するタイミング。会社の発表前にSNSで情報発信をしてはいけません。

②研修の実施

 作成したガイドラインに沿って、従業員に対してSNSの利用方法についての研修を行うことが必要です。

 SNSの炎上は若い世代で発生しやすいと思われるかもしれませんが、実際は年代問わず発生します。
 例えば、新聞社「新潟日報」に勤務する50代の男性が、新潟水俣病訴訟弁護団長の弁護士に対して、Twitterで誹謗中傷を繰り返し、問題になった事例があります。

 このように、ある程度の社会経験を積んでいる年代の人も、SNSで不適切な発言をしてしまう可能性があるため、年代や役職を問わず、全社従業員を対象に研修を行ったほうがよいでしょう。

  また、新入社員研修の一環で、SNSの使用のガイドラインを説明することも重要です。
4月の入社式直後に、「社員証」がSNSに掲載されることが相次ぐという現象が起こります。新入社員が、社会人になったという嬉しさのあまり投稿しているようですが、社員証には企業名はもちろん、顔写真、氏名や生年月日など個人情報が記載されているため、いくら自分の情報とは言え好ましくありません。

③SNSの監視

 企業によっては、従業員がSNSのアカウントを報告するところもあり、投稿の監視を行っています。

 また、SNSでは「ハッシュタグ」で、Googleなど検索エンジンの場合は「キーワード」で、企業名や自社の商品名などで炎上や不適切発言がないかを監視する必要があります。
 問題を発見した際は、即座に広報部やコンプライアンス委員会に報告しましょう。

ネットに強い弁護士に相談

 ネットの普及は、ビジネスにも大きな変化をもたらしました。
 例えば、ネットでのプロモーション活動。従来は、マスメディアを通じて行っていた情報発信が、ネット上で自由に行えるようになりました。
一方で、ネット上の行為によって企業に不利益が生じることも多くあります。例えば、SNSや転職口コミサイトでの企業への誹謗中傷は、企業イメージを損ねる可能性があります。また、告発はメディアや裁判ではなく、ネットで行われることが多くなりました。

 企業は、ネット上のトラブルにいつ巻き込まれるかわかりません。不測の事態の時は、ネットに強い弁護士に相談することが良いでしょう。

 ネットのトラブルは、解決を図る際にネットワークの仕組みなどIT全般の知識が必要な場合があります。法律の知識だけでは解決できないケースも多いため、ネットの知識も兼ね揃えた弁護士に相談することでスムーズに問題解決へ向かうことが予想されます。
 また、あらかじめネットに強い弁護士を企業顧問として迎えておくと、更に不測の事態に対して万全でしょう。