ネットの名誉毀損に関する判例

  • 2019.04.09
ネットの名誉毀損に関する判例

誰もが自由に書き込みができるSNSやブログ、掲示板。情報を発信したり、収集したりする活用法で多くの人が利用しています。
とても便利なサイトですが、その中の一部で他人の名誉を傷つけるような言動するユーザーも存在します。
この記事では、ネット上の名誉毀損における、過去の判例をまとめてご紹介します。
 

「名誉毀損」とは?

 「名誉毀損」とは、不特定多数の状況下で、他人の社会的評価(名誉)を下げる言動を指します。さらに簡単に言うと、大勢の人が見たり聞いたりできる状況で、他人の評価が下がるような言動をとることを言います。

 刑法で「名誉毀損罪」(230条)が定められています。名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役50万円以下の罰金に処されます。

「ネットの名誉毀損」とは?

 名誉毀損は、ネット上でも適用されます。
 ネット上のSNSやブログ、掲示板は、多くの人が見ることができる場所です。そのため、「不特定多数の状況下」となり、ネットに他人の社会的評価を下げるようなことを書き込むと名誉毀損に該当する可能性があります。

 ネット上での名誉毀損は、ネットの普及に伴い増加しています。最近では、プロ野球選手が、掲示板で名誉毀損されたとして、一般人を訴えたことが話題になりました。

テレビ、新聞、週刊誌も対象!

 テレビや新聞、週刊誌などメディアが報じる内容も、場合によっては名誉毀損になる可能性があります。

 ネットはここ数十年で普及したものですが、テレビや新聞、週刊誌は、何十年前から存在します。新聞においては前身の瓦版からすると、その歴史は江戸時代以前からとされていました。
 そのため、これらのメディアが名誉毀損で訴えられるケースは多々あります。

名誉毀損罪の成立要件

 名誉毀損罪は、成立するまでに3つの要件(条件)をクリアしなければなりません。その要件は以下の通りです。

◆公共の利益を図る目的があること(公共性)
◆公共の利害に関する事実であること(公益性)
◆真実であると証明されるか、または真実であると信じるに相当の理由があること(真実性)

 つまり、名誉毀損罪が成立するためには、ネットに書き込んだ事柄が、①世の中の人々への利益になる。②公表しなければ世の中の人々が損をすることになりかねない。③真実であることを証明できる。この3つをクリアする必要があります。

名誉毀損は「刑事」と「民事」がある

 名誉毀損の被害を受けた際、解決する方法として、「刑事」と「民事」の2つの選択肢があります。

 「刑事」は、警察などの捜査機関に捜査を依頼し、解決を図ります。
 刑法で定められている名誉毀損罪は、「親告罪」です。親告罪とは、被害を受けた本人や代理人(弁護士など)が、警察などの捜査機関に被害届を提出することで捜査が開始することです。
 逆に、殺人罪の場合は、被害者が警察に被害を訴えなくても、事件が発覚すれば
捜査が始まる「非親告罪」です。

 「民事」は、裁判所に被害を訴え、裁判によって解決を図ります。
 裁判では、名誉を傷つけられた代償として損害賠償(慰謝料)の請求を求めるケースが多いです。

 次項では、民事でネットの名誉毀損を解決した際の判例(事例)についてお伝えします。

「ネットの名誉毀損」民事裁判の判例

 「判例」とは、裁判の「先例」のことで、過去の裁判において、裁判所が示した判断のことです。同趣旨の裁判が繰り返された場合に規範化することで、参考にするものです。

 ネット上の名誉毀損は、これまで裁判に至ったケースも多くあります。
 

ネットの名誉毀損のポイント「プロバイダ責任制限法」

 ネット上での名誉毀損で裁判となった場合、ポイントとなる法律が「プロバイダ責任制限法」です。

 「プロバイダ責任制限法」とは、ネットの普及に伴い、ネットのトラブルも増えたことで制定された法律で、コンテンツプロバイダ(サイト管理者)やインターネットプロバイダ(ネット回線会社)などプロバイダの責任を定めたものです。

 また、ネット上のトラブルでの被害者の保護を図る目的で、認められている法的な手続きがあります。

◆「送信防止措置依頼」

 「送信防止措置依頼」とは、ネット上の書き込みの削除を依頼することです。書き込みをされた本人または代理人(弁護士など)が、コンテンツプロバイダに対して行います。

「送信防止措置依頼書」についての詳細はこちらをクリック

◆「発信者情報開示請求」

 「発信者情報開示請求」とは、匿名のSNSやブログ、掲示板での書き込みにおいて、書き込みした人物を特定する手続きのことです。

 「発信者」とは書き込みを行った人物。「開示請求」とは、相手が持っている情報を提示させることを言います。要するに、匿名で書き込みを行った人物の個人情報の提示を、インターネットプロバイダに求めることを指しています。

「発信者情報開示請求」についての詳細はこちらをクリック

一般人が加害者になった裁判の判例

 ネット上の誹謗中傷トラブルは、「一般人と一般人」「有名企業と一般人」「芸能人と一般人」など、ごく普通の一般の人がほんの出来心でネットに他人の悪口を書き込み、加害者になるケースが多くあります。

人形部品メーカーへの誹謗中傷(2009~2010年)

【概要】
 人形のドールの部品メーカー(原告)が、電子メールや匿名掲示板などのネット上で相次いで誹謗中傷され、インターネットプロバイダなどに発信者情報開示請求を求め提訴。身元が明らかになった発信者(被告)に対しても民事訴訟を起こしました。

この事例は、匿名で書き込みをしていた人物のひとりが、原告のライバル企業の従業員でことから、当時テレビや雑誌など多くのメディアでも取り上げられ話題になりました。

【判決】
 裁判では、被告が原告に謝罪。双方が和解し終結しています。 

 

動物病院への誹謗中傷(2005~2010年)

【概要】
 動物病院(原告)が、匿名掲示板で誹謗中傷を受けたとして、削除に応じない掲示板管理者この事例は、掲示板が普及しはじめた頃のもので、ネットの名誉毀損では先駆けとなる裁判です。
に対して損害賠償を求めて裁判を起こしました。
 
【概要】
 裁判は最高裁判所(最高裁)まで争われました。被告は、原告に対して250万円の支払いと書き込みの削除を命じられています。

 ネットの名誉毀損の損害賠償の相場は、企業など事業を行っている人が被害者の場合、50万円から100万円と言われています。そのため、この裁判での250万円という金額は高額と言えます。

在日朝鮮人に対する誹謗中傷(2017年)

【概要】
 在日朝鮮人のフリーライター(原告)が、ツイッターに名誉毀損または侮辱する内容の言葉を書き込まれたとして、投稿者(被告)に対して損害賠償を求めて裁判を起こしました。

【判決】

 大阪高等裁判所は、名誉毀損または侮辱が認められ、被告は原告に対して77万円の損害賠償の支払いを命じています。

リンクを貼っただけでも名誉毀損!(2012年)

【概要】
 都内の男性(原告)が、掲示板に自身の名誉を傷つける内容の記事のリンクを貼られたとして、インターネットプロバイダ(被告)に対して発信者情報開示請求を求めて裁判を起こしました。

【判決】
 一審で地方裁判所は、原告の訴えを棄却。リンクを貼っただけでは名誉毀損に該当したいと判断しました。
 しかし、二審の高等裁判所は、「リンクを張ることは、クリックして記事の内容を見ることが想定できる」と原告の訴えを認めました。

有名人への誹謗中傷

 世間一般的にバッシングされやすい立場にいる芸能人。ネットの名誉毀損は一般人が被害に遭いやすいですが、やはり多くの芸能人もその被害に苦しんで裁判に至った人がいます。

麻木久仁子さんへの誹謗中傷(2011年)

【概要】
 タレントの麻木久仁子さん(原告)が、自身と当時16歳の娘に対する名誉毀損が掲示板で行われたとして、インターネットプロバイダ(被告)に対して発信者情報開示請求を求めて裁判を起こしました。

【判決】

 裁判所は、原告の訴えを認め、被告に対して発信者情報開示請求を命令しました。
また、問題の書き込みには、「16歳長女」と記し、麻木さんの娘の名前を伏せて誹謗中傷が行われていましたが、「実名を出さなくても、多くの人が誰を指しているのかわかる場合は名誉毀損が成立する」と判断されています。

弁護士に相談!

 お伝えしたように、ネット上の名誉毀損で裁判に至ったケースはたくさんあります。
 その被害者は、いわれなき誹謗中傷に苦しみ、裁判を提訴したことでしょう。一方の加害者は、「匿名だから何を書いてもかまわない」「みんなが書いているから自分も悪口を書いた」など安易な気持ちが書き込みを行うケースが多いことが現状です。

 そして、ネットの名誉毀損は、誰もが被害者に、加害者にもなる可能性があります。もし、トラブルの当事者になってしまったら、弁護士に相談することをオススメします。

 ネットが普及した現代、ネットの名誉毀損のようなトラブルは増えています。そこで、ネットのトラブルを得意分野とする弁護士が存在します。

 匿名性が高いネットのトラブルは、「相手の顔が見えない」などの特徴があるため、第三者が入って解決を図ることが最善策とも言えることでしょう。