本記事では、著作物を簡単に分かりやすく説明させていただきます。
著作物の定義と著作権法
著作物の定義は、著作権法で定められています。
著作権法とは、著作者の努力を報いて、かつ、文化が発展することを目的に制定された法律です。著作権法は、知的な創作活動によって何かを作り出した人に付与される知的財産権のうちの1つです。
著作物は、著作権法で以下のように定められています。
【著作権法第2条第1項第1号】
(著作物とは)思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの |
上記の条文を分かりやすく「①思想又は感情」「②創作的に表現したもの」「③文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」に分けて説明させていただきます。
①思想又は感情
製作者の思想や感情のことを指します。
②創作的に表現したもの
製作者自身の個性が表現されたもののことを指します。
③文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
言葉や文字、形、色、音楽等で表現されたもののことを指します。
以上の①から③をまとめると、著作物とは、「製作者の思想や感情が、製作者の個性で言葉や文字、形、色、音楽等で表現されたもの」と言えるでしょう。
そのため、著作物と聞くとプロが作成したものに限られる向きがありますが、決してその限りではありません。アマチュアの方、あるいは幼稚園児や主婦の方が作成したものでも著作物になる可能性があります。
では、具体的にどのようなものが著作物になるのでしょうか。それについては著作権法10条で例示されています。
著作物の類別
著作権法第10条第1項では、次のようなものを著作物として例示されています。
・言語の著作物…言葉によって表現されたもの
・音楽の著作物…音楽によって表現されたもの
・舞踏又は無言劇の著作物…身振りや動作によって表現されたもの
・美術の著作物…形や色で表現されたもの
・建築の著作物…建築芸術によって表現されたもの
・図形の著作物…図によって表現されたもの
・映画の著作物…動画によって表現されたもの
・写真の著作物…人や風景によって表現されたもの
・プログラムの著作物…プログラミングによって表現されたもの
以上で列記したものを、をさらに深く掘り下げて類別すると、下表に挙げたものが著作物に該当する可能性があります。
著作物の類別 | 著作物例 |
言語の著作物 | 論文、小説、脚本、俳句、講演 |
音楽の著作物 | 楽曲、歌詞 |
舞踏又は無言劇の著作物 | 踊りの振り付け(日本舞踊、バレエ、ダンス、パントマイム等) |
美術の著作物 | 絵画、版画、彫刻、美術工芸品(壺、茶碗、刀剣等)、漫画、劇画、書、舞台装置 |
建築の著作物 | 芸術的な建造物(寺院、橋、庭園等) |
図形の著作物 | 地図、学術的な性質を有する図面、図表、模型、設計図 |
映画の著作物 | 劇場用映画、テレビドラマ、CM、ネット配信動画、ビデオソフト、ゲームソフト、ホームビデオ映像 |
写真の著作物 | 写真、グラビア |
プログラムの著作物 | コンピュータプログラム |
その他の著作物
前出の著作物の他にも、著作物として認められているものがあります。それは「二次的著作物」「編集著作物」「データベース著作物」の3種です。以下に例示します。
著作物の類別 | 著作物例 |
二次的著作物(既存の著作物に新たに創作を加えて作成された物) | 著作物を翻訳したもの、編曲、変形(既存の著作物を変換すること:小説を映画化した作品等) |
編集著作物 | 百科事典、辞書、判例集、論文集、新聞、雑誌、詩集 |
データベース著作物 | 編集著作物のうちコンピュータで検索出来るもの |
著作物でないもの
これまでは、著作物の対象になるものについて説明してきましたが、ここからは、著作物の対象ではないものについてお伝えします。
まず著作物の定義を振り返ってみましょう。著作権法第2条第1号第1号の「(著作物とは)思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」が著作物になる可能性があります。それをを基に、「①思想又は感情」「②創作的に」「③表現したもの」「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」の4つに分けて、それぞれどのようなものが「著作物でないもの」に当たるのかを見ていきましょう。
①思想又は感情
思想や感情が込められていないものは、著作物でないと言えるでしょう。
②創作的に
ありふれたものや、他人の作品を真似したものは、著作物ではないでしょう。
③表現したもの
何かしらの形で表現されていないものは、著作物でないと言えるでしょう。
④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する
文芸や学術、美術または音楽で表現されていないものは、著作物ではないでしょう。
以上の4つから下記のものは著作物でないものに当たると考えられます。
著作物でないもの | 著作物でない理由 |
・歴史的事実
・データ(スカイツリーの高さ、将譜) ・メニュー ・料金表 ・証券 |
思想や感情が込められていないため
|
・既視感のあるデザインのビル・住居建造物
・選択の幅が狭い表現(作品のタイトル、流行語、標語、キャッチフレーズ、商品名等) |
ありふれたものだったり、他人のものを真似したものであるため |
・思想そのもの(例:アイデア、キャラクター設定)※但し、アイデアを文字に起こした解説書や、キャラクターのデザインは著作物に当たります。 | 何かしらの形で表現されていないため |
・工業製品(例:自動車のデザイン)
・実用品のデザイン |
文芸や学術、美術、音楽で表現されていないため |
・演劇 | 戯曲や音楽等、様々な著作物が同時に上演される場と見なされているため |
著作物であるが著作権で保護されないもの
また、著作権法13条では、次に挙げるものは著作物であるが著作権で保護されないと定められています。
①…憲法その他の法令(地方公共団体の条例・規則を含む)
②…国や地方公共団体、独立行政法人の告示、訓令、通達、その他、これらに類するもの
③…裁判所の判決、決定、命令、審判・行政庁の裁決・決定で裁判の準ずる手続により行われたもの
④…国や地方公共団体、独立行政法人が作成した①から③の翻訳物・編集物
著作権で保護されない理由は、国民の権利や義務を直接形成し、国民に広く周知されるべき事項であるためです。