転職口コミサイトは、これから面接へ向かう企業の情報を事前に知ることができ、求職者にとっては貴重な情報収集源になっています。
しかし一方で誹謗中傷の口コミも多く、企業の採用活動の妨げになっているケースがあるのです。
転職口コミサイトの代表格に挙げられえる「カイシャの評判」も例外ではありません。「カイシャの評判」に投稿された誹謗中傷の口コミによって、採用活動を妨げられている企業は少なくありません。
そのため、企業等からは「『カイシャの評判』に投稿された口コミを削除したい」という声が上がっています。本記事では、その声に応えるべく、「カイシャの評判」の口コミを削除するための依頼方法をご説明させていただきます。
「カイシャの評判」とは
「カイシャの評判」とは、<後悔のない会社選びを、カイシャの評判で。>というスローガンを基に運営されている転職口コミサイトです。運営元は求人サイト「エン転職」を手がけるエン・ジャパンです。
「カイシャの評判」には社員・元社員のリアルの声が寄せられています。転職希望者がそれを参考にすることにより、新しい会社に入社した際に生じるミスマッチを避けることが期待出来ます。
しかし一方で、根拠のない酷評が投稿されていたり、評価の点数が著しく低くついていたりなど、企業の採用活動に影響を及ぼす口コミも少なくありません。
そのため、「カイシャの評判」が採用活動に影響を及ばないかどうかを憂慮する採用担当者は少なくありません。
口コミの削除対象
とはいえ、「カイシャの評判」では、そのような誹謗中傷の口コミを野放しにしてはいません。一定の取り締まりが出来るよう、以下のような口コミを削除対象としています。
①明らかに虚偽の情報が含まれている
②自身の意見ではなく、他人の意見を代弁する内容が含まれている
③個人を特定した誹謗中傷や悪意のある表現が含まれている
④利用規約に反している
⑤その他、運営が適切でないと判断した口コミ
引用元:https://en-hyouban.com/info/help/18/
なお、④については以下が該当します。
(1)虚偽の情報、第三者の誹謗中傷、その他第三者の名誉、信用または心情等を傷つける情報を公開する行為
(2)第三者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス等の個人情報を公開する行為
(3)法令に違反する行為
(4)犯罪に関連する行為
(5)公序良俗に反する行為
(6)当社または第三者の知的財産権等、プライバシー権、名誉権、信用、その他一切の権利または利益を侵害する行為
(9)本サービスの運営・維持を妨げる行為
(13)第三者になりすます行為
引用元:https://en-hyouban.com/terms/
運営側の積極的な削除は期待出来ない
以上のように削除対象が設けられていますが、実際に該当する口コミを削除するとは限りません。というのも、利用規約第8条に以下のような規定があるためです。
当社は、送信情報を可能な限り監視するべく努めておりますが、常に監視する責任や特定の送信情報の削除等を行なう責任を負うわけではありません。
引用元:https://sakujo.or.jp/kaishanohyouban/#toc1
上記を解釈すると、「運営側は『カイシャの評判』の口コミを可能な限り監視はするものの、常時監視したり、問題のある口コミを削除したりする責任はない」と言えるでしょう。
つまり、問題のある口コミがある場合は、被害者から「カイシャの評判」へ削除の依頼をしなければならないのです。
削除依頼に必要な書類
削除依頼をする際は、2つの書類を用意しなければなりません。それは、「傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」と「証拠書類」です。
それぞれ説明させていただきます。
【書類①】傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書
傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書とは、「カイシャの評判」で用意されている、削除依頼をするための書面です。
傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書は、コチラからダウンロード出来ます。
傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書には、「掲載を侵害されたとする者」「掲載されている場所のURL」「掲載されている情報」「侵害されたとする権利」「権利が侵害されたとする理由」の5項目を記入しなければなりません。それらを記入する際は下記画像を参考にしてみてください。
【傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書の記入例】
引用元:http://www.moj.go.jp/content/001243953.pdf
侵害されたとする権利
傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書に記入する5項目のうち「侵害されたとする権利」については、分からない方も少なくないでしょう。そこで、「カイシャの評判」で侵害される可能性がある権利について説明していきます。
「カイシャの評判」で侵害される可能性のある権利は、名誉権とプライバシー権です。名誉権を侵害される「名誉毀損」と、プライバシー権を侵害される「プライバシーの侵害」について以下の表で説明をします。「侵害されたとする権利」を記入する際の参考にしてみてください。
権利 | 定義 | 例 |
名誉毀損 | 不特定多数の状況下で、他人の社会的評価を下げる行為 | ・社員の〇〇と△△が不倫をしている
・残業代が支払われない ・有給休暇を取得出来ない |
プライバシーの侵害 | 公共の場で、公開を望んでいない個人情報や私生活の情報を暴露する行為 | ・社員の〇〇や東京都の××に住んでいる
・〇〇の携帯電話番号は☓☓☓-☓☓☓☓-☓☓☓☓だ ・〇〇のメールアドレスは△△△@△△△だ |
【書類②】証拠書類
次いで、権利を侵害されたことを立証する客観的証拠になる書類を用意します。
例えば、「毎日残業が3時間もある」という口コミが事実でないことを証明するとします。その場合は、従業員が毎日3時間の残業をしていないことを立証するタイムカードや出退勤管理表等の書類を用意しましょう。
送付先
以上の2つの書類を用意出来たら、「カイシャの評判」の運営元であるエン・ジャパンに送付します。送付先は以下の住所です。
〒163-1342 東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー エン・ジャパン株式会社 「カイシャの評判」事務局 宛 |
なお、急ぎの場合は必要書類を添付の上、「hyouban-info@en-japan.com」に送信をすれば対応してくれる可能性があります。
削除依頼をする際の注意点
削除依頼をする際は以下を注意してください。
【注意点①】「マイナスな感想」=「権利侵害」とは限らない
マイナスな感想は、権利侵害に当たると考える方は少なくないかもしれません。ですが、口コミをした人にも表現の自由があります。そのため、全てのマイナスの感想が権利侵害に当たるとは限らない、ということを留意しておきましょう。
【注意点②】削除されるまでにかかる期間
依頼をしてから削除されるまでには一定期間を要します。数ヶ月程度を見ておきましょう。
なお、削除が完了すると郵送で通知書類が届けられます。
口コミが削除されない場合
以上で紹介した方法で削除依頼をしても、応じてもらえない可能性も考えられます。その場合は、泣き寝入りするしかないのでしょうか。
実は、他にも方法があります。次の2つの方法が挙げられます。
【方法①】仮処分
仮処分とは、裁判をせずに勝訴(裁判で勝つこと)時と同じ状態を確保する手続きのことをいいます。
判決が下されるまでに1年前後あるいはそれ以上の期間を要する裁判に対して、仮処分は数日から数週間で判決が下されます。
裁判で判決が下されるのを待っていては問題のある口コミが拡散される恐れがあります。スピーディーな解決が望まれるインターネット上のトラブルは、裁判より短期で判決が下される仮処分の方がよいと言えるでしょう。
【方法②】発信者情報開示請求
発信者情報開示請求とは、プロバイダに対し、発信者の情報(住所・氏名・登録された電話番号等)の開示を求めることをいいます。
発信者情報開示請求は、投稿者を突き止めて、本人に削除してもらうこと等を目的に行います。
弁護士に相談をするのがオススメ
以上の「仮処分」「発信者情報開示請求」は法的手続になるため、法律に関する専門知識が必要になります。自身で手続きを進めていくことは非常に難しいです。
昨今は、インターネットネット上のトラブル解決を得意分野とする弁護士が現れています。ですので、インターネット上のトラブルに強い弁護士に相談をすることをオススメします。弁護士に相談をすれば、それぞれの問題に対し的確に応じてくれるでしょう。
まとめ
「カイシャの評判」で口コミが書き込まれた場合は、傷害情報の通知書兼送信防止措置依頼書と証拠書類を用意してエン・ジャパンに郵送しましょう。しかし、「カイシャの評判」では削除基準を設けています。そのため全ての削除依頼に応じるとは限りません。
もし、削除の応じない場合は、弁護士に相談することをオススメします。弁護士に相談をすれば「仮処分」「発信者情報開示請求」等の法的手続を以て、解決に導いてくれるでしょう。
本記事が「カイシャの評判」の誹謗中傷に苦しんでいる採用担当者にとっての一助になっていただけたら幸いです。