ネット上で誹謗中傷をしている人を特定するためには、証拠が欠かせないと言えます。
本記事では、被害者が、誹謗中傷している人を特定するための証拠の保存方法を中心にお伝えしたいと思います。
特定と発信者情報開示請求
そもそも誹謗中傷をしている人を特定するためには、発信者情報開示請求という手続を行わなければなりません。
発信者情報開示請求とは、投稿者の個人情報を把握しているSNS・ブログ・掲示板の運営者やプロバイダに、誹謗中傷をしている人の情報開示を求める手続のことをいいます。
証拠を保存する理由
ではなぜ、誹謗中傷をしている人を特定するためには、証拠を保存しなければならないのでしょうか。それには以下3つの理由が挙げられます。
【理由①】仮処分は証拠保全が必要
SNS・ブログ・掲示板の運営者やプロバイダは、発信者情報開示請求に応じないケースが多いです。というのも、サイト運営者やプロバイダには個人情報の守秘義務があるためです。
ですので、多くの誹謗中傷の被害者は、加害者を特定するために仮処分(裁判をせずに勝訴時と同じ状態を確保する手続)を行います。仮処分は裁判手続の1つであり、証拠保全(裁判などに用いる証拠を確保すること)を行わなければなりません。
【理由②】ログ記録が消去されても対応出来る
ネット上の投稿は全て誰が書き込みをしたか、に関する情報はプロバイダが管理しています。そのため、誹謗中傷を行った人を特定するためには、プロバイダに投稿者の情報開示を求めます。
とはいえ、プロバイダは、その情報を永久に保存していません。各プロバイダにより異なりますが、3~6ヶ月程度で、投稿者の情報を削除します。
誹謗中傷を受けている人が、投稿者を特定するまでには、約9ヶ月の期間を要します。特定作業の最中で、プロバイダに保管されている投稿者の情報が消去される可能性があります。
消去されても、証拠が残るように証拠を残しておく必要があります。
【理由③】消されても対応出来る
これは、誹謗中傷をしている人の特定作業をしている最中に、投稿者が被害者に裁判を起こされるのを恐れて、問題の書き込みを削除する可能性があります。もし、削除されると、特定が困難になります。
削除されても、誹謗中傷をされた事実が分かるように、証拠を残しておきましょう。
証拠を保存する際の留意点
被害者が証拠を保存する際は、以下のポイントを押さえるようにしましょう。
・URLと時間が分かるようにする
・誹謗中傷に至る流れが分かるようにする
上記2つが不足していると、証拠不十分で特定までこぎつけられない可能性があるので注意してください。
証拠保存の方法
では以上の留意点を押さえるのは、どのような証拠保存方法があるのでしょうか。主に以下3つの方法が挙げられます。
【方法①】印刷保存
印刷保存の方法は、プリントアウトとPDFファイルが挙げられます。いずれの方法も、スクロール先まで見えるようにしましょう。
プリントアウトする場合は、上部(ヘッダー)や下部(フッダー)にURLと印刷日時が記録されるようにしましょう。それについては、プリンタで設定が可能です。
また、URLが長いと、その一部が表示されないという問題が発生します。印刷する際は、印刷されるページのURLが表示されるように、あらかじめ設定しておきましょう。
さらに、印刷をすると、ウェブ上の表示とズレが表示される可能性があります。印刷した後、ウェブ上の表示とズレがないか確認をしましょう。
【方法②】画像保存
画像保存の方法は、主にスクリーンショットが挙げられます。
スクリーンショット以外にも、スマホやデジカメで、パソコンで当該画面を撮影する方法でも構いません。
画像保存する場合は、URLと問題の書き込みが全て映っているかどうかを確認してください。
また、ウェブ魚拓という画像保存方法もあります。ウェブ魚拓とは、WWW上のウェブサイトをキャッシュ(高速でのデータ入出力を可能にするメモリのこと)として保存する無料のサービスです。
日本の企業である株式会社アフィリティーが2006年から運営しています。
【方法③】動画保存
問題の箇所が多い場合、印刷・画像保存では、手間がかかります。その場合は、動画保存がオススメです。動画保存では、問題のページを一連の動作で撮影できるため、1つの動画で保存が可能です。
問題の書き込みが削除されている場合
そもそも、問題の書き込みが削除されている場合は、証拠を保存する方法はないのでしょうか。
実は、インターネットアーカイブで証拠を保存する方法があります。インターネットアーカイブとは、インターネット上に公開されたウェブページを保存し、サーバ上から削除されたコンテンツも閲覧出来るサービスのことです。
インターネットアーカイブは2001年10月からサービスがスタートし、1996年10月以降に公開された膨大な量のウェブページを保存しています。利用者は、インターネットアーカイブのウェブサイトにアクセスすれば無償で利用出来ます。
このシステムを使うことにより、なんと1996年10月まで遡ることが可能になりました。
弁護士に相談をすることも良策
昨今は、ネット上の誹謗中傷問題を得意分野とする弁護士が頭角を現しています。ですので、誹謗中傷に強い弁護士に相談をすることも良策と言えます。
相談者の状況に併せて、証拠の保存方法について適したアドバイスをしてくれるでしょう。
終わりに
個人であれば人格を否定され、法人であれば倒産の危機に瀕するような事態にもなりかねない、誹謗中傷。「インターネットなら匿名だから心配ない」と考えている発信者(=加害者)が気軽に私人または法人を陥れるという言動は、決して許されるものではありません。“先手必勝”で証拠を保存し、迅速な対応で解決を目指してください。