表現の自由とは何か?簡単に分かるように解説

表現の自由とは何か?簡単に分かるように解説

 実社会における友人との会話、ネット上の発言など、日常の中で私たちは、自分の主張をさまざまな方法で自由に表現することができます。また、政治に対する批判的な意見も述べる権利も持っています。

 日本では、「この言葉を言ったら逮捕される!」といった原則はありません。それは、<span class=”fw-bold”>自由に自分の意志や意見、事実等を表明する権利</span>である“表現の自由”が憲法で保障されているためです。

 この記事では、“表現の自由”とは何か、簡単に分かるように解説していきたいと思います。

 

表現の自由とは

 表現の自由は、憲法21条第1項で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と定められています。
 表現の自由は、憲法でこの一文で明示されているため、従来は「内心の思想・意見等を外部に発表する自由」として認識され、表現者に対して適用されると解されていました。

 しかし、20世紀以降の情報化社会の伴い、表現行為は受け手が存在して、はじめて意味を持つものである、という解釈に変化してきました。

 そのため、憲法21条1項には、自由に表現出来る「表現の自由」に併せて、自由に情報を受け取れる「知る権利」も含まれている、と解釈されるようになったのです。

 

表現の自由は何のため?

 では、表現の自由は何のために憲法で保障されているのでしょうか。

 人は自分の思いや考えを他人に知ってもらったり、他人の発表する情報を見聞したりすることでより幸せになることが出来ます。例えば、アーティストは自分の作った楽曲を多くの人に聴いてもらうことを通して、自身の才能や役割を確認し、喜びを感じるでしょう。対してリスナーは、好きな曲を自由に聴いて楽しむことで心が豊かになります。

 このように何かを表現したり見聞したりする行為は、人が人であるための根幹であると考えられています。その根幹を保障するために、表現の自由が憲法で制定されたのです。

 

表現の自由で保障されている内容

 既述の通り、憲法21条第1項で定められている表現の自由には、表現者に保障される「表現の自由」と、情報の受け手に保障される「知る権利」が含まれています。それぞれについて深堀りしていきましょう。

表現者に保障される「表現の自由」

 表現者に保障される「表現の自由」には、言論の自由、報道の自由、取材の自由、集会・結社の自由が含まれています。ひとつずつ見ていきましょう。

【表現の自由①】言論の自由

 言論の自由とは、自身の思想・信条・意見・知識・事実等を表明する自由のことを指します。
 “言論”と聞くと、表明手段は文章や発言に限定されると考えるかもしれません。しかし、その限りではありません。言論の自由では、演説、新聞、雑誌、書籍等の言論表現だけでなく、歌唱、写真、絵画等の芸術表現等も保障されています。

【表現の自由②】報道の自由

 報道の自由とは、報道機関等が事実を国民に知らせる自由のことを指します。
 憲法21条1項の条文には「報道」という言葉は入っていませんが、報道は、国民の知る権利に奉仕するものと考えられ、重要な意義を有するものとされています。

【表現の自由③】取材の自由

 取材の自由とは、報道するために必要な取材を保障することをいいます。
 但し、取材の自由は、憲法21条1項で直接保障するものではなく、「憲法21条1項の精神に照らし合わせ、十分に尊重する」という判例文に基づいて、保障されるものであるち考えられています。

【表現の自由④】集団・結社の自由

 集団・結社の自由とは、団体を結成し、集会を開いたり意思や主張を集団で示したりする自由のことを言います。

情報の受け手に保障される「知る権利」

 情報の受け手に保障される「知る権利」とは、国民が公的な情報について公開・提供を要求する権利のことをいいます。
 また、「知る権利」には、国政に関する情報収集活動が国家権力によって妨げられない権利も含まれています。

 「知る権利」は、メディアから流される情報の良し悪しを、国や政治家のような権力を持った者が判断するのではなく、あくまでも、情報を受け取る側である国民が自ら判断するべき、という考えが根幹になっています。

 

「表現の自由」と「基本的人権」

 表現の自由は、民主主義の根幹を形成する要素であるとして、手厚く憲法で保障されています。とはいえ、上限なく全ての表現が保障されているとは限りません。

 基本的人権を侵害する表現については、表現の自由で保障されていません。

・基本的人権とは

 全ての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利のことをいいます。基本的人権では、プライバシー権や” 肖像権名誉権等が保障されています。

 基本的人権は、憲法11条で「侵すことの出来ない永久の権利」と定められています。そのため、「表現の自由」を大義名分に、基本的人権を侵害することは認められていないのです。
 例えば「バカ」「ブス」「カス」と罵るなど、基本的人権を侵害するような表現は、表現の自由で保障されない可能性が考えられます。

 

最後に

 お伝えしたように、表現の自由は、人間が人間らしく生きるために重要な権利です。そして、民主主義国家として成り立つ日本にとっても不可欠な権利であることに間違いありません。
 表現の自由は国民を守るための権利ですが、その存在があるが故に、基本的人権を侵害され、苦しんでいる人も存在します。

 今後、このような被害に苦しむ人々を救う方法へ向かうことが期待されます。